ニューヨーク・タイムズ、ニュースルームでのAIツール活用を本格化

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ニューヨーク・タイムズ( NYT )が、ニュース制作業務(ニュースルーム)における AI ツールの使用を大幅に拡大する取り組みを進めていることが最近明らかになりました。 2024 年から小規模なパイロットグループで試験を重ねてきた NYT は、 2025 年 2 月にニュースルーム全体での AI ツール使用を正式に承認し、スタッフ向けトレーニングを開始しています。

注目すべきは、 NYT が独自に開発した AI ツール「 Echo 」です。 Echo は、記事や取材内容を要約し、ニュースレター向けに簡潔で親しみやすいサマリーを作成する機能を持っています。さらに、 SEO 向けのヘッドライン生成や文章の洗練化をサポートする編集提案、ソーシャルメディア用のプロモーションコピーの作成にも活用されています。また、取材資料や過去の記事の分析、クイズや FAQ といったインタラクティブコンテンツの開発にも役立てられています。

外部ツールとしては、 GitHub Copilot 、 Google Vertex AI 、 OpenAI の非 ChatGPT API なども活用され、コーディングやデータ処理の効率化が図られています。

NYT は AI 活用に際して厳格なガイドラインを設けています。 AI による記事の起草や大幅な変更は禁止され、第三者の著作権素材を AI に入力することも認められていません。 AI 生成された画像や動画には明示的なラベル付けが義務付けられ、 AI 出力は必ず編集者による確認が必要とされています。

この移行に伴い、 NYT は全ニュースルームスタッフに AI トレーニングを提供し、新ツールの使用法を指導しています。一部スタッフからは AI の正確性や創造性喪失への懸念も上がっていますが、 NYT は業界の倫理基準に沿った慎重なアプローチを取ることでこれらに対応しています。

NYT のこの動きは、ジャーナリズム業界全体への波及効果が予想されます。大手メディアの本格的 AI 採用により、 AI 支援型ジャーナリズムが標準となる可能性があります。一方で、 NYT が OpenAI と Microsoft を著作権侵害で訴えている背景もあり、 AI 技術への依存と法的・倫理的バランスの模索が今後の課題となるでしょう。


筆者の視点:大手の出版社やメディアは AI に関しては総じて否定的な姿勢をとっていますが、今後すべての産業で、 AI を業務に導入し、効率化を進めていくことは不可避の流れになってきています。NYT もその流れに逆らわず、入れるべきところには積極的に AI を導入していくという姿勢を明らかにしました。この変化への柔軟性は日本企業も見習い、迅速に、かつ広く積極的に、日常業務に AI を導入していくことが求められていると思います。