MatterGen : 材料科学に革新をもたらす Microsoft の新 AI モデル

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Microsoft Research は、特定の特性を持つ新しい材料を生成できる革新的な AI モデル「 MatterGen 」を発表しました。これは、科学者が新しい材料を発見し設計する方法に新たな変化をもたらすものとなっています。

MatterGen は、DALL-E や Stable Diffusion のような画像生成 AI と同様の技術を使用した生成 AI モデルの一種で、ランダムな原子配置から始めて、徐々に調整しながら安定した材料を生成します。3 次元結晶構造の生成や磁気・電子・機械的特性の直接制御が可能であるなど、材料科学に特化した設計が施されているのが特徴です。

従来の AI モデルと比較して、MatterGen は生成された材料の安定性が 2.9 倍向上したとされています。また、中国 深圳先進技術研究院( SIAT )との共同実証実験では、AI が設計した新材料「 TaCr₂O₆ 」の合成に成功したとのことです。

Microsoft は、MatterGen のソースコードをオープンソースとして公開し、同社のクラウド( Azure Quantum Elements )上でも利用可能にするなど、研究者や開発者が自由に利用・改良できる環境を整備しています。

MatterGen は、エネルギー貯蔵、半導体設計、環境技術などの分野で大きな影響を与える可能性があり、産業界や科学界全体に革新をもたらすことが期待されています。


筆者の視点:Google の DeepMind はノーベル化学賞を受賞した「 AlphaFold 」をベースとし、新しいタンパク質を作り出す「 AlphaProteo 」というモデルをオープンソース化しています。今回の Microsoft の発表は新しい材料の発見と設計ということで、異なる分野ですが、類似点があります。科学界にとって非常に意義深い発表だと思います。