2025 年 7 月 15 日、ドナルド・トランプ大統領はペンシルベニア州ピッツバーグのカーネギーメロン大学で開催された「ペンシルベニア・エネルギー&イノベーション・サミット」で、人工知能( AI )およびエネルギー分野への総額 920 億ドル(約 13 兆 6,160 億円)超の大規模投資を発表しました。大統領は「アメリカの使命は AI 超大国になることだ」と宣言し、 AI 経済を支えるエネルギー供給の拡大と雇用創出の重要性を強調しました。
今回の投資には Google 、 Blackstone 、 ExxonMobil 、 Meta 、 Microsoft 、 Amazon Web Services などの主要テック・エネルギー企業 20 社が参加しています。具体的なプロジェクトには、大規模データセンターの建設、天然ガス・原子力発電所の新設、送電網の強化、 AI 分野の労働者訓練センターの設立などが含まれます。
注目すべき個別プロジェクトとして、 Knighthead は旧ホーマーシティ石炭火力発電所を北米最大の天然ガス火力発電所に転換し、データセンター拠点を建設する 150 億ドル(約 2 兆 2,200 億円)の計画を発表しました。 Google はペンシルベニア州の水力発電施設 2 か所の再生に数十億ドルを投じる予定です。
Westinghouse は 2030 年から AP-1000 原子力炉 10 基の建設を開始し、 750 億ドル(約 11 兆 1,000 億円)の経済効果を生み出すと見込まれています。これらの投資により、建設業や技術職を中心に数万人規模の新規雇用が創出される予定で、かつて製鉄業で栄えた Aliquippa などの地域の再活性化が期待されています。
トランプ大統領は「アメリカが世界 No.1 の AI 超大国になる」という戦略目標を掲げ、 AI の電力集約的なデータセンターを稼働させるためのエネルギー確保の必要性を訴えました。風力などの再生可能エネルギーを「信頼できない」として退け、化石燃料と原子力エネルギーに重点を置く方針を明確にしています。
ピッツバーグが開催地に選ばれた理由は、カーネギーメロン大学の AI ・ロボティクス分野でのリーダーシップ、マーセラスシェール天然ガスの豊富な資源、利用可能な工業用地の存在などが挙げられます。 PNC Financial Services の CEO ビル・デムチャク氏をはじめとする地元リーダーたちは、この地域が AI 革命を主導する可能性を高く評価しています。
一方で、サミットには環境保護団体や市民グループから強い反対の声も上がりました。約 1,500 人がカーネギーメロン大学に開催再考を求める請願書に署名し、化石燃料依存、 AI 監視、環境影響への懸念を表明しました。オークランド地区での抗議デモでは、道路を封鎖した参加者にピッツバーグ警察が催涙スプレーを使用する事態も発生しています。
この投資パッケージは、 AI の成長とそれを可能にするエネルギー供給増強をセットで推進し、中国との AI 覇権競争における米国の優位性確保を狙う戦略の一環です。データセンターの電力需要は 2030 年までに産業全体のエネルギー消費を上回ると予測されており、トランプ政権はエネルギー生産を国家安全保障と技術的優位性に直結する課題として位置づけています。
批評家たちは、化石燃料に重点を置いたこの投資が持続可能性の観点から問題があり、 Google や Meta が以前投資していた風力・太陽光などの再生可能エネルギーを軽視していると指摘しています。また、公共利益団体がサミットから排除されていることから、企業主導のアジェンダではないかとの疑念も示されています。