2025 年 12 月 11 日、トランプ米大統領が AI に関する新たな大統領令に署名しました。この大統領令は、連邦政府主導で統一的な AI 規制の枠組みを構築し、州ごとの独自規制を大幅に制限する内容となっています。
大統領令の主な目的は、中国との AI 競争において米国の優位性を維持することです。トランプ政権は、州ごとにバラバラな規制が存在する「パッチワーク」状態が企業の負担を増やし、イノベーションを阻害していると主張しています。具体的には、司法省に「 AI 訴訟タスクフォース」を設置し、 AI 開発を制限する州法に対して積極的に法的措置を取る方針です。
この動きに対して、テック業界からは歓迎の声が上がっています。投資家や起業家の間では「規制について議論している間に、中国と競争してイノベーションを優先すべき」という意見が強いためです。一方で、州知事や消費者保護団体からは「連邦の越権行為であり、子供の安全や差別防止といった重要な保護が弱体化する」との批判も出ています。
一方の中国は、 AI 安全を政治的優先事項として位置づけ、サービス展開前の安全審査を義務化するなど、厳格な規制を敷いています。基準を満たさない AI 製品を市場から大量に排除するといった措置も取られており、統制と加速を両立させるアプローチを採用しています。
この対照的な戦略について、CNBCのレポーター Deirdre Bosa は「米国は高性能なランボルギーニ型 AI を、中国は安全で大衆向けのプリウス型 AI を目指している」と指摘しています。どちらのモデルが世界標準となるかによって、今後のグローバルな AI ガバナンスの方向性が大きく変わる可能性があります。
今後は、連邦と州の間で法廷闘争が起きることも予想されており、米国が統一的な AI 政策を実現できるのか、それとも内部対立に時間を費やすことになるのか、注目が集まっています。
