トヨタ自動車と Alphabet 傘下の Waymo は 2025 年 4 月 30 日、自動運転技術分野での戦略的パートナーシップを発表しました。今回の提携で特に注目されるのは、個人所有車の活用における二つの方向性です。一つは Waymo の自動運転技術を個人所有のトヨタ車に搭載すること、もう一つはその個人所有車を Waymo のロボタクシーフリートに組み込み、所有者が対価を得るビジネスモデルの構築です。
Waymo の共同 CEO であるテケドラ・マワカナ氏は、「トヨタ車の Waymo One ライドシェア・フリートへの統合も視野にある」と発言しています。これはこれまで Waymo が独自に運営していたロボタクシーフリートに、個人所有のトヨタ車を参加させる可能性を示唆しています。所有者は自分の車が使用されていない時間帯に Waymo のネットワークに接続することで収益を得られる仕組みになると見られています。
この戦略は、これまで Tesla が強く推し進めてきた方向性と類似しています。Tesla は「 Full Self-Driving 」機能を搭載した個人所有車をオーナーの承諾のもとネットワークに接続し、ロボタクシーとして活用することを長年構想してきました。これに対し Waymo は従来、専用設計の車両による企業主導のフリート運営に注力しており、両社のアプローチには明確な違いがありました。
しかし最近、Alphabet の CEO サンダー・ピチャイ氏が「 Waymo の長期ビジネスモデルは未定だが、個人所有車両への展開は大きな選択肢」と発言したことで、Waymo が Tesla と同様の方向性を検討していることが明らかになり、市場の注目を集めていました。今回のトヨタとの提携は、この新たな戦略の具体例として捉えられており、業界に大きな反響を呼んでいます。
技術面では、Waymo の自動運転システムは LiDAR 、カメラ、レーダーなど複数のセンサーを組み合わせ、公道走行データ数千万 km に基づく安全技術により、人的運転と比較して事故率を 81 %削減する実績を持っています。この技術をトヨタの信頼性の高い車両設計と組み合わせることで、個人所有車の安全性向上とロボタクシーフリートの拡大という二つの目標を同時に達成することが期待されています。
さらに、この個人所有とフリート活用の融合モデルは、自動車の稼働率を高め、都市部での駐車スペース不足や渋滞の軽減にも貢献する可能性があります。車の所有者にとっては、使用していない時間に収入を得られるメリットがあり、特に高額な自動運転車の普及を促進する要因になると見られています。
両社はまだ「予備的な提携」段階としており、具体的なビジネスモデルや収益分配の仕組み、技術的な詳細は今後詰められていくことになります。しかし、世界最大の自動車メーカーとロボタクシー運行の先駆者が手を組んだことで、自動運転市場の勢力図が大きく変わる可能性を秘めた提携として、業界の注目を集めています。