元 OpenAI CTO の Mira Murati 氏が率いる AI スタートアップ「 Thinking Machines Lab 」が、2025 年 10 月 1 日に同社初の製品となる「 Tinker 」という API サービスを発表しました。 Tinker は、開発者や研究者が大規模言語モデル( LLM )のカスタマイズやファインチューニングを、複雑なインフラ管理なしで実現できる点が特徴です。
Thinking Machines Lab は 2024 年 9 月に設立され、 Murati 氏以外にも OpenAI の共同創業者である John Schulman 氏や Barret Zoph 氏(元研究 VP )、 Lilian Weng 氏、 Andrew Tulloch 氏、 Luke Metz 氏など、 OpenAI の著名な元メンバーが参加しています。同社は 2025 年 7 月に 20 億ドル(約 2948 億円)のシード資金を調達し、評価額は 120 億ドル(約 1 兆 7688 億円)に達しました。これは AI スタートアップ史上最大規模のシードラウンドの一つとなっています。
Tinker では、 Meta の Llama や Alibaba の Qwen など、様々なオープンウェイトモデルのファインチューニングが可能です。 Qwen-235B-A22B のような大規模 Mixture-of-Experts モデルにも対応し、 Python コードの 1 行を変更するだけで、小さいモデルから大きいモデルへ切り替えられます。また、 LoRA ( Low-Rank Adaptation )技術を活用することで、複数のトレーニングジョブが同じ計算資源を共有でき、コストを低減できます。
利用者は自分でクラウドや分散サーバーの管理をする必要はありません。 Tinker 側がスケジューリングやリソース配分、障害回復などの運用面をすべて代行するため、ユーザーは素早く実験やトレーニングを実施できます。
Tinker の特徴的な点は、 forward_backward
や sample
といった基本的な構成要素(プリミティブ)を提供していることです。通常のファインチューニングサービスでは決められた方法でしか訓練できませんが、 Tinker ではこれらの部品を自由に組み合わせることで、強化学習やカスタムの訓練ループなど、研究者独自の手法を実装できます。公式の「 Tinker Cookbook 」オープンソースライブラリも公開されており、最新の実装例にすぐアクセスできます。
すでにプリンストン大学の Goedel チームが数学定理証明モデルを訓練したり、スタンフォード大学 Rotskoff 化学グループが化学推論タスク用モデルの微調整を行ったり、バークレー大学 SkyRL グループやRedwood Research などがこのサービスを利用しています。
Tinker は現在、研究者と開発者向けにプライベートベータとして提供中で、ウェイトリストへの申し込みが可能です。最初は無料で提供され、価格体系は今後数週間以内に発表される予定です。