少し前のニュースですが、世界最大のコールセンター運営会社であるフランスの Teleperformance(テレパフォーマンス)が、カリフォルニア州パロアルトのスタートアップ企業 Sanas(サナス)と戦略的提携を結び、インドのカスタマーサービスエージェントの英語の訛りをリアルタイムで「中和」する AI 技術を導入しました。このニュースは 2025 年 2 月 19 日に発表されたものです。
Teleperformance は、世界中で約 49 万人を雇用し、 Apple 、 TikTok 、 Samsung などの大手企業にカスタマーサポートやコンテンツ管理サービスを提供しています。特にインドでは約 9 万人の従業員を抱え、同国は同社の重要な拠点となっています。しかし、インド人スタッフの英語の発音や訛りが欧米の顧客にとって理解しにくい場合があるという課題がありました。
Sanas の「アクセント翻訳」技術は、コールセンタースタッフの声をリアルタイムで分析し、訛りを抑えた「中立的」な発音に変換します。この技術の特徴は、話者の感情や個性を保ちながら訛りだけを調整できること、そして背景雑音を除去するノイズキャンセリング機能も備えていることです。Teleperformance の副 CEO であるトーマス・マッケンブロック氏は、この技術が「ゼロ遅延でインド人話者の訛りを中和し、より親密なコミュニケーションを創出し、顧客満足度を高め、通話時間を短縮する」と説明しています。
Teleperformance は Sanas に 1,300 万ドル(約 19 億 5,000 万円)を投資し、同社の技術を自社のクライアントに独占的に再販する権利を獲得しました。この提携は、Teleperformance が 2025 年に AI 関連のパートナーシップに最大 1 億ユーロ(約 161 億 8,500 万円)を投資する計画の一環です。
一方で、この技術には賛否両論あります。訛りを「中和」することでスタッフの文化的アイデンティティが失われるのではないかとの懸念や、過去に Sanas の技術が「より白人っぽくする」と批判された経緯もあります。これに対して Sanas は、「コールセンターの従業員がこの技術を支持しており、インドやフィリピンなどの国で新たな就業機会を生み出している」と反論しています。
すでに UPS や Walmart などの企業でも Sanas の技術は採用されており、他の BPO (ビジネス・プロセス・アウトソーシング)企業にも広がりを見せています。
筆者の視点:先日、筆者はとあるアメリカ企業のコールセンターに電話をかけ、この技術を体験しました。ところどころにインド訛りは感じられたものの、全体としては非常に聞き取りやすいブリティッシュイングリッシュに変換されており、大変助かりました。また、記事にもある通り、ノイズキャンセリング機能のおかげで話し声がはっきりと聞こえました。
これまでアメリカ企業のコールセンターと通話すると、普段聞きなれない訛りが強かったり、ヘッドセットの品質のせいか声がこもって聞き取りづらい、といった問題が多くありました。文化的な観点から賛否はあるようですが、何よりも会話の内容が明確に伝わらなければ、そもそもサービスとして成り立ちません。その点からも、筆者はこうした技術の導入を前向きに評価したいと思います。