Suno、AI音楽生成ツール v5.5 をリリース――ボイスクローニングとカスタムモデルを導入

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AI音楽生成サービスの Suno は、2026 年 3 月 26 日に最新バージョン v5.5 を公開しました。CEO の Mikey Shulman 氏は「自分の声や音楽スタイルをそのまま AI に反映できる、これまでで最もパーソナルなバージョン」と説明しており、今回のアップデートは単なる性能改善ではなく、ツールを「自分専用に育てる」方向への明確な路線変更といえます。新機能は「 Voices 」「 Custom Models 」「 My Taste 」の 3 つです。

最も注目される「 Voices 」は、有料プラン( Pro ・ Premier )のユーザーが自分の歌声を登録し、 AI が生成した楽曲に自分の声で歌わせられる機能です。登録は 30 秒〜 4 分の音声を録音またはアップロードするだけで完了します。他人の声を無断で登録される心配については、画面に表示されるランダムなフレーズをその場で読み上げる本人確認ステップで対応しています。あらかじめ用意した録音では突破できない仕組みとなっています。声の再現精度は利用者がスライダーで調整でき、ベータテストでは再現度を高めの設定にした場合に聴衆の約 70 %が「本人の声に近い」と評価したとされています。ただし、この機能を有効にするには声のデータを Suno の AI 開発に活用することへの同意が必須となっており、利用前にその点を把握しておく必要があります。

「 Custom Models 」は、自分がこれまでに制作した楽曲を 6 曲以上アップロードすることで、 AI を自分の音楽スタイルに合わせて調整できる機能です。セットアップは 2 〜 5 分程度で完了します。有料ユーザーは最大 3 つのモデルを同時に保持できます。たとえば、ジャズ系の楽曲だけを学習させたモデル、エレクトロニック系のモデル、アコースティック系のモデルをそれぞれ作っておき、制作したい内容に応じて切り替えて使うといった活用が想定されています。また、無料ユーザーを含む全員が利用できる「 My Taste 」は、日々の制作・試聴の傾向をもとに AI が自動でスタイル提案をパーソナライズする機能で、使い続けるほど提案の精度が上がる設計になっています。

事業面では、 Suno は 2025 年 11 月に約 375 億円( 2 億 5,000 万ドル)の資金調達を完了し、企業価値は約 3,675 億円( 24 億 5,000 万ドル)に達しています。 2026 年 2 月時点での有料会員数は 200 万人、年間経常収益は約 450 億円( 3 億ドル)で、累計利用者数も 1 億人を超えました。

一方、大手レコード会社との法的な緊張は続いています。 Sony Music 、 Universal Music Group 、 Warner Music Group の 3 社が 2024 年に著作権侵害で提訴しましたが、 Warner とは 2025 年 11 月に和解してパートナーシップへ移行しました。現在も Sony Music との訴訟は継続中で、アーティスト側の「 Say No to Suno 」キャンペーンも続いており、 AI と音楽業界の関係は引き続き緊張をはらんでいます。

Shulman 氏は、 v5.5 が Warner Music Group と共同で開発を進める次世代モデルの基盤になると述べています。個人化を競争の核心に置くという戦略が、今後の AI 音楽市場の標準にどう影響するか、業界全体が注目しています。