イスラエルのネットトラフィック調査会社 Similarweb が 2025 年 7 月に公開した最新の「 Global AI Tracker 」レポートで、生成 AI プラットフォーム全体のウェブトラフィックにおいて、 OpenAI の ChatGPT が 78 %という圧倒的なシェアを維持していることが分かりました。 2 位は Google の 8.7 %で、 ChatGPT の一人勝ち状態が続いています。
この調査は、生成 AI 分野の主要サイトについて 12 週間のトラフィック変化を詳しく分析したもので、 2025 年 5 月 9 日までのウェブトラフィックデータをもとにしています。 ChatGPT がユーザーにとって最も重要な AI ツールとして定着し、市場でのリーダーシップを確立していることが改めて確認されました。
Google は前年の 8.4 %からわずかに伸びていますが、 ChatGPT との差は相変わらず大きく、二強による寡占状態が続いています。その他の主要 AI プラットフォームとしては、 Deepseek 、 Grok ( xAI )、 Perplexity 、 Claude ( Anthropic )、 Microsoft Copilot などがありますが、どれもトラフィックシェアは一桁台にとどまっています。
注目されるのは新しいプラットフォームの動きです。 DeepSeek や Grok などは一時期急激に成長( DeepSeek は約 86 倍、 Grok は 1 万倍以上)しましたが、その後は急激にトラフィックが落ち込み( DeepSeek は 4 割減、 Grok は大幅減)、継続的にユーザーを維持することの難しさが浮き彫りになっています。
各プラットフォームの最新の成長率を見ると、 Google 関連 AI が 63 %増と依然として力強い伸びを示しているのに対し、 OpenAI は 3 %増と成長ペースが鈍化しています。 Claude ( Anthropic )は 26 %増で回復の兆しを見せており、爆発的に成長した DeepSeek や Grok は一巡して 20 %超の減少傾向に転じています。
特に目立つのは旅行系 AI の急成長です。 Mindtrip ( +131 %)、 Iplan ( +24 %)、 Destinations ( +94 %)など旅行に特化した AI が急速に利用を伸ばしており、旅行業界( OTA やコンシェルジュサービス)が最も大きな変革を迫られる兆候が現れています。
AI の分野別では「汎用チャット型」への利用が最も多く、 コード生成、画像、 Voice / Video など専門分野でも成長が続いています。特に開発者向けツールは 72 %の成長を記録しており、 AI がソフトウェア開発やビジネスの基盤に深く入り込んでいることがうかがえます。
一方で、 AI ツールの普及により既存サービスに変化が起きています。文章作成ツール全体のトラフィックは 11 %減少し、従来の教育プラットフォーム( Chegg や CourseHero )は最大 60 %のトラフィック減少を記録しています。また、フリーランスプラットフォーム( Fiverr や Upwork など)や従来の検索エンジン( Yahoo や Bing )なども利用者が減っており、 AI による業界の再編が進んでいることが見て取れます。
ChatGPT は 1 日あたり 25 億件のプロンプトを処理しており、 Google 検索の 1 日約 140 億件にはまだ届かないものの、急速に追いついています。また、 ChatGPT の API 利用は 60 %増加しており、従来 Anthropic が強かった企業向け( BtoB )の活用が広がっていることも分かっています。
この調査はウェブトラフィックを中心としたデータのため、 API 経由での利用やモバイルアプリの使用状況は完全には反映されていない可能性があります。それでも、 AI の普及が既存の業界に大きな影響を与えている現状がはっきりと示されており、 OpenAI と Google による寡占状態が今後どう変わっていくのか、また新興勢力がどこまで食い込めるかが注目されます。