日 Sakana AI 、複数 AI モデル協調アルゴリズム「 AB-MCTS 」公開

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東京の AI スタートアップ Sakana AI は 2025 年 7 月 1 日、複数の AI モデルがチームとして協力して問題を解決する画期的なアルゴリズム「 AB-MCTS (Adaptive Branching Monte Carlo Tree Search)」を発表し、オープンソースとして無料公開しました。これにより、一つの AI では解けなかった難しい問題も、複数の AI の”集団知”で解決できるようになります。

AB-MCTS は、 ChatGPT 、 Gemini 、 DeepSeek といった異なる得意分野を持つ AI モデルを、まるで人間のチームのように協力させる仕組みです。囲碁 AI の AlphaGo で使われた技術を発展させたもので、従来の「より大きな AI を作る」「より多くのデータで学習させる」という競争とは全く違うアプローチを取っています。

最大の特徴は「推論時スケーリング」という考え方です。これは、すでにある AI モデルを組み合わせて、問題を解く時により多くの計算リソースを使って性能を高める新しい方法です。各 AI が「いい答えをさらに改良する(深く考える)」ことと「まったく新しい答えを考え出す(幅広く考える)」の両方をバランスよく行い、最適な解答を効率的に見つけ出します。

動作の仕組みは、複数の AI モデルがそれぞれ違う解答を提案し、お互いの答えを検証・改善しながら、最終的に最も良い解答を選び出すというものです。あるモデルが間違った答えを出しても、他のモデルがそれを修正して正解に導くなど、本当に人間のチームワークのような協力関係が実現されています。

性能テストでは、 AI の総合的な知能を測る非常に難しいテスト「 ARC-AGI-2 」で素晴らしい結果を示しました。最新の AI モデル o4-mini 、 Gemini-2.5-Pro 、 DeepSeek-R1-0528 などを AB-MCTS で協力させたところ、最も優秀な単独モデルの正答率 23 %を上回る 27.5 %を達成しました。これは複数の AI が力を合わせることで、一つの AI では不可能だった問題解決能力を実現したことを証明しています。

Sakana AI は、この技術を「 TreeQuest 」という名前で GitHub に完全公開しており、誰でも自由に使ったり改良したりできます。研究論文も arXiv で公開されているため、世界中の研究者がこの技術をさらに発展させることが期待されています。

応用分野は幅広く、医療研究、金融分析、物流最適化、科学実験など、複雑で専門的な知識が必要な分野での活用が見込まれています。実際に Sakana AI は三菱 UFJ フィナンシャル・グループと銀行業務の自動化で協力した実績もあり、企業での実用化も現実的です。

この技術が重要なのは、「より巨大な AI を作る」競争から「既存の AI をより賢く協力させる」という新しい方向性を示したことです。計算コストは複数のモデルを使うため高くなりますが、オープンソース化により小さな組織でも最先端の AI 技術を活用できるようになります。

現在はまだ研究段階ですが、将来的には様々な分野で AI チームが人間を支援し、今まで解決できなかった複雑な問題に挑戦できるようになるでしょう。 Sakana AI は今後も自然界の「進化」や「群れの知恵」を AI に応用し、より柔軟で強力な AI システムの開発を続けるとしており、 AI 業界の新たな可能性を切り開く取り組みとして大きな注目を集めています。