軍事分野

ペンタゴン、8社のAI企業と機密ネットワーク契約を締結―Anthropicは引き続き排除

ペンタゴン、8社のAI企業と機密ネットワーク契約を締結―Anthropicは引き続き排除
文字サイズ

ペンタゴン(米国防総省)は 2026 年 5 月 1 日、OpenAI・Google・Microsoft・Amazon Web Services・Nvidia・Oracle・SpaceX・Reflection の 8 社と、国防総省の高度な機密ネットワーク上でAIを運用することを認める契約を結びました。このネットワークは、米軍が実際の作戦判断に使用する最高機密レベルの環境です。

Anthropicはかつて、ペンタゴンの機密ネットワークで唯一の承認AIベンダーでした。 2025 年 7 月に 2 億ドル(約 300 億円)の契約を締結し、軍の機密環境にAIを展開した最初の企業でもあります。しかし、ペンタゴンが軍による自律型兵器や大規模監視への利用も含む「すべての合法的目的」に Claude を使えるよう要求したことに対して Anthropic が拒否したことで、両者の蜜月関係は決裂しました。トランプ政権は 2026 年 3 月、同社をアメリカ企業として前例のない「サプライチェーンリスク」に指定し、防衛関連企業との取引を禁止したうえで、 6 か月以内に他社製品に移行するよう命じています。

今回 8 社との新契約に盛り込まれた「合法的な作戦での使用」という表現は、一見中立的に見えますが、 Washington Post はこれが Anthropic が拒否した安全上の制約を実質的に骨抜きにするものだと指摘しています。つまり、自律型兵器や大規模監視への利用をペンタゴンが「合法」と見なしさえすれば、AIの用途を制限なく広げられる抜け穴になりかねない表現です。一方で、 Anthropic の後に国防総省と契約した OpenAI は、大規模な国内監視・自律型兵器・人間の審査を介さずにAIだけで逮捕・拘束・処罰といった重大な判断を下すような使い方、の 3 点を、いかなる契約においても「越えてはならない一線」と宣言しています。ただし、今回契約した 8 社が実際にこうした制約を守るかどうかを外部から検証する手段はなく、実効性には疑問符がつきます。

また、利益相反の問題も浮上しています。新たに契約した Reflection AI は 2026 年 10 月に 20 億ドル(約 3,000 億円)を調達した新興企業で、ドナルド・トランプ・ジュニアが関与するベンチャーキャピタル「 1789 Capital 」の支援を受けています。議員の調査によると、同ファンドが投資するポートフォリオ企業は 2025 年 4 月から 11 月の間に、トランプ政権から計 7,000 万ドル(約 105 億円)超の政府契約を受注していたことが明らかになっており、そうした利益相反が問題視されています。

Anthropicはサプライチェーンリスクに指定された後、その措置が不当であるとトランプ政権を提訴しており、カリフォルニア州の連邦裁判所は政府の措置を一部差し止めました。そのため、現在、国防総省との取引は閉ざされたままですが、他の政府機関との契約は継続できる状態になっています。ビジネス面への打撃も限定的で、同社の企業評価額は約 9,000 億ドル(約 135 兆円)に達しており、 Google や Broadcom と新たに結んだ大型契約が失った国防総省の案件を十分に補っています。またペンタゴン内部でも、スタッフや元当局者の間にはその使い勝手の良さから Claude を手放したくないという声が根強く残っているとされています。

トランプ大統領は先週、Anthropicが「軌道修正しつつある」と示唆しており、ブラックリスト指定が解除される余地も残っています。