OpenAI 、中国の「 AI Tigers 」企業の動きに警戒を呼びかける

投稿者:

OpenAI は最近、中国の新興 AI 企業群「 AI Tigers 」、特に北京を拠点とする「 Zhipu AI (智谱 AI )」の動きに関して強い警戒を呼びかけました。この警告は、米中間の AI 覇権争いが新たな局面を迎えていることを示しています。

「 AI Tigers 」とは、中国が米国への技術依存を減らし、世界の AI 競争で主導権を握るために戦略的に育成している AI 企業群の総称です。その代表格である Zhipu AI は 2019 年に設立され、中国政府から 14 億ドル(約 2,024 億円)超の巨額資金を調達し、李強首相をはじめとする中国共産党の高官と密接な関係を築いています。

技術面では、 Zhipu AI は独自の生成 AI モデル「 GLM 」シリーズを開発し、グローバル展開を積極的に進めています。ロンドン、クアラルンプール、ドバイ、シンガポールなど世界各地に拠点を設置し、東南アジアでは「イノベーションセンター」を設立するなど、海外戦略を着実に実行しています。

OpenAI が最も警戒しているのは、 Zhipu AI が中国の「デジタル・シルクロード」戦略の中核を担っていることです。この戦略は、米欧企業の参入前に中国製 AI システムや標準を新興国市場に根付かせ、各国の AI インフラを中国主導で固めることを狙っています。

実際に Zhipu AI は、 Huawei (華為)などと協力してマレーシア、シンガポール、 UAE 、サウジアラビア、ケニアなどの政府や国有企業に AI ソリューションを提供しています。最近では「 AutoGLM Rumination 」という新エージェントを発表し、高度なリサーチ機能をアピールしています。

OpenAI は、中国の AI 企業が新興国の AI インフラを中国標準で先取りすることで、米欧の AI 企業が市場から締め出されるリスクがあると強調しています。さらに、中国の AI モデルが中国政府のイデオロギーや検閲の影響を受け、民主主義的価値観とは異なるバイアスを持つモデルが世界標準になっていくことへの懸念も表明しています。

特に注目すべきは、オープンソース AI を巡る地政学的転換点です。中国企業が「無料でパワフルな AI コード」を世界に提供する戦略を取る一方、米国企業がクローズドソースへの移行を推進していく中、次世代 AI のスタンダードが中国製オープンソースコードになっていくリスクが高まっています。

この警告は、単なる企業間競争を超えて、 AI 技術の国際標準やセキュリティ、技術覇権の地政学的配分を巡る闘争を表しています。新興市場では、コストやアクセシビリティの観点から中国の AI が選ばれるケースが増える可能性があり、 中国製のAI の普及が進む懸念もあります。

今後、米中間の AI 競争はさらに激化し、国際的な AI ガバナンスや技術標準の確立が急務となることが予想されます。