OpenAI が高度な AI エージェントの提供を計画していることが明らかになりました。米The Information誌 の報道によると、同社は月額 2,000 ドルから 20,000 ドル(約 30 万円から 300 万円)という高額な価格帯で、特定の専門分野に特化した AI エージェントの展開を進めているとのことです。
この新サービスは、 3 つの価格帯で提供される見込みです。最も安価な月額 2,000 ドルのプランは「高所得ナレッジワーカー」向けで、データ分析やレポート作成などの知識集約型業務を自動化。中間の月額 10,000 ドルのプランはソフトウェア開発者向けで、コーディングやデバッグなどの技術的タスクをサポート。最高額となる月額 20,000 ドルのプランは「博士レベル」の研究支援を行い、膨大なデータセットの統合や文献レビューなどの高度な分析能力を提供する、とされています。
この動きの背景には、OpenAI が昨年約 50 億ドルの損失を計上したという財務状況の改善が急務となっていることがあります。ChatGPT だけで年間 40 億ドルの収益を上げているものの、さらなる収益源の確保が必要と見られています。
一方で、このような高額な価格設定に対しては、AI の利用が一部の大企業に限定され、経済格差を拡大させる可能性があるとの懸念の声も上がっています。しかし、 24 時間稼働し休暇を取らない AI の特性を考慮すると、「博士 8 人分を 2 人分の価格で雇える」という見方もあり、コスト対効果は高いとする意見もあります。
OpenAI の CEO 、サム・アルトマン氏は 2025 年に AI エージェントが「労働力に加わり、企業の生産性を大きく変える」と予測しており、この計画はその第一歩と言えるでしょう。今後、Google DeepMind や Anthropic など他の AI 企業との競争が激化する中、AI が社会や労働環境に与える影響を考えるきっかけとなりそうです。
筆者の視点:OpenAI が新たな価格戦略を打ち出してきました。年始のDeepSeek から始まった大規模言語モデルのダンピング競争とは一線を画し、OpenAI はエージェント化を推進し、高価格化へと動いています。先日発表した月額 200 ドルの Pro プランは、あまりにも登録者の使用頻度が高いため、完全な赤字だと以前アルトマン CEO は以前発言していましたが、そうした状況も背景にあるようです。
企業側が「AI エージェントを導入すれば人を雇うよりも安い」と判断すれば、この価格帯は十分に受け入れられるはずです。したがって、鍵となるのは、エージェントがどこまで自律的に高度な業務を遂行できるかという点に尽きます。2025 年には、基盤モデルの開発競争からエージェントの開発競争へと移行すると筆者は展望しましたが、今回の動きでその流れがよりはっきりと輪郭を見せてきました。