医療特化 AI「 Open Evidence 」とは何か──米国医師の 4 割が利用する臨床支援ツール

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Open Evidence は、ハーバード大学や MIT の研究者らによって開発された、医師・医療従事者向けの AI プラットフォームです。「医療版 ChatGPT 」とも呼ばれますが、一般的な AI チャットボットとは大きく異なる特徴を持っています。

最大のポイントは、情報源を査読済みの医学論文やガイドラインに限定している点です。NEJM( New England Journal of Medicine )や JAMA、PubMed 収載の論文など、信頼性の高い医学文献のみをソースとして回答を生成し、すべての情報に引用元が明示されます。一般的な AI で問題となるハルシネーション(もっともらしい誤情報の生成)を抑えるため、ランダムなウェブ情報や SNS 投稿などは学習データから除外されています。

臨床現場での活用シーンは多岐にわたります。複雑な症状に対する鑑別診断のリストアップ、特定の併存疾患を持つ患者への治療薬の選択、最新の治療ガイドラインの確認など、医師が日常的に直面する臨床上の疑問に対して、数秒でエビデンスに基づいた回答を返してくれます。米国医師免許試験( USMLE )では 90% 以上のスコアを記録しており、汎用 AI を上回る専門性を示しています。

従来、こうした臨床上の疑問に答えるツールとしては UpToDate や DynaMed が広く使われてきましたが、Open Evidence はこれらと比べて自然言語での質問が可能で、回答速度も速いという利点があります。また、症例写真や検査画像のアップロードによる解釈支援など、マルチモーダル対応も進んでいます。

2026 年現在、米国では認証された医師が無料で利用でき、米国医師の約 40% にあたる 43 万人以上が登録しています。「 UpToDate の次世代版」「医師の新しい OS 」とまで言われるほど浸透が進んでおり、医師の業務効率化や医療の質の向上に寄与するツールとして注目を集めています。ただし、多くの医療機関ではまだ「実験的ツール」という位置づけであり、最終的な臨床判断は医師自身の責任で行うことが前提となっています。