NVIDIA の競合として注目される AI チップ開発企業 Cerebras Systems の IPO(新規株式公開)が、米国政府による国家安全保障審査の長期化により延期されていると報じられています。同社は 2024 年 9 月に IPO の意向表明書類を提出しましたが、6 か月以上経過した現在も審査が完了していません。
延期の主な原因は、アブダビに拠点を置く AI 企業 G42 からの投資です。G42 は 2021 年に約 4000 万ドル(約 60 億円)、2023 年にさらに 3 億 3500 万ドル(約 502 億円)の投資を Cerebras に行いました。また G42 は同社の最大顧客でもあり、2023 年の Cerebras の収益の 83%、2024 年上半期には 87%を占めています。
問題となっているのは、G42 が過去に中国の Huawei と関係があったことです。米国は中国への先端半導体技術の流出を防ぐため厳しい規制を設けており、G42 の関与が国家安全保障上のリスクと見なされています。このため IPO にあたっては米国の対外投資委員会(CFIUS)による審査が必要であり、これが完了しない限り IPO は進められません。
2025 年 3 月 25 日の報道によると、Cerebras 経営陣はトランプ政権への交代で審査が迅速に進むことを期待していましたが、新政権下でも CFIUS の主要ポストの任命が完了しておらず、審査プロセスが停滞しています。複数の関係者は「審査は数か月にわたり宙に浮いている」と証言しています。
Cerebras は 2015 年に設立され、AI 向けの高性能コンピュータチップ「 Wafer Scale Engine ( WSE )」を開発しています。同社は AI 研究機関やデータセンター向けに専用ハードウェアを提供し、AI の処理性能と効率の向上を目指しています。Cerebras のシステムは特に推論フェーズで高い性能を発揮し、圧倒的なスピードで応答できることから注目を集めています。2023 年の売上は 7,870 万ドル(約 118 億円)で、純損失は 1 億 2,700 万ドル(約 190 億円)でした。
この遅延が長期化すれば、Cerebras の資金調達や事業拡大計画に影響を与える可能性があります。また G42 への依存度の高さは投資家にとってリスク要因とみなされており、顧客基盤の多様化が今後の課題となるでしょう。