Netflix は 2026年7月16日に公表した Q2 決算報告書で、生成 AI を約 300 タイトルの制作に取り入れていることを明らかにしました。同社が生成 AI の活用を初めて認めたのは 2025年7月のことで、当時はアルゼンチンの SF シリーズ『ザ・エターノーツ』1 作品にとどまっていました。それからわずか 1 年で、対象作品数は桁違いに増えています。
活用の範囲は、企画段階のコンセプト設計から撮影後の編集・仕上げ作業まで、制作工程の全体に広がっています。中でも最も活用が集中しているのはポストプロダクション(編集・仕上げ)の工程です。企画段階では、ビジュアルイメージの検討やコンセプトアートの作成に役立てられています。ポストプロダクションでは、大規模な群衆シーンや歴史的な戦闘シーンの映像生成、架空の都市や風景など作品の世界観を成立させる背景映像の制作などに使われています。株主向けレターでは、インドのスポーツスリラー『Glory』、ブラジルのサッカーミニシリーズ『Brasil 70: A Saga do Tri』、アメリカ革命を題材にしたドキュメンタリー『The American Experiment』の 3 作品が具体例として挙げられています。
共同 CEO のテッド・サランドスは、『The American Experiment』における 17 分間の映像を「従来の手法と比べてコストは半分、制作スピードは 2 倍だった」と説明しました。重要なのは、この成果が既存の作業を AI に置き換えただけではないという点です。サランドスが強調するのは、「従来であれば予算やスケジュールの制約からカットせざるを得なかったシーンを実現できた」ということです。制作コストを抑えながら作品のスケール感を高め、削減分をさらなるコンテンツへの投資に回せるという考え方は、映像業界全体に示唆を与えます。
この考え方は、他の映像制作会社にとっても参考になります。群衆の生成や背景の作り込みなど、従来は VFX アーティストが多大な工数を割いていた複雑な作業に AI を適用することで、クリエイターをより創造的なプロセスに集中させることができます。Netflix は一貫して「AI はアーティストを置き換えるものではなく、彼らのビジョンを実現するためのツール」という立場をとっており、現場への導入においてもクリエイターの能力を拡張する手段として位置づけています。
戦略投資の面では、Netflix は 2026年3月に俳優のベン・アフレックが設立した AI 映像制作会社「InterPositive」を買収しています。買収額は最大 6 億ドル(約 900 億円)と報じられており、同社として過去最大規模の買収案件です。InterPositive は既存の撮影素材をベースに AI モデルを作り、色味の調整や照明の再現、VFX の追加などを編集段階で行う技術を持っています。
一方、業界内の反発は依然として続いています。著名監督のギレルモ・デル・トロが生成 AI の使用に強く反対を表明するなど、制作現場からの懸念は根強く、俳優・声優の労働組合 SAG-AFTRA もデータの扱いや雇用への影響について問い続けています。
Q2 の売上高は前年同期比 13.4% 増の 125.6 億ドル(約 1 兆 8,840 億円)、純利益は 34 億ドル(約 5,100 億円)でした。年間のコンテンツ投資額は 2026年に最大 200 億ドル(約 3 兆円)に達する見込みで、AI による効率化がそのコスト管理を支える柱になると見られています。
