Moonvalley が AI 映像生成モデル「 Marey 」を正式リリース、著作権クリアなプロ向けツール

投稿者:

元 DeepMind 研究者らによって設立されたロサンゼルス発の AI スタートアップ Moonvalley は 2025 年 7 月 8 日、映画制作者向けの AI 映像生成モデル「 Marey (マリー)」を正式リリースしました。このモデルは完全にライセンスされたコンテンツのみでトレーニングされており、著作権リスクのない「クリーン」な AI 映像生成を実現しています。

Marey の最大の特徴は、プロフェッショナル向けの設計です。映画監督や映像制作者が現場で求める細かな演出・制御を AI でも再現可能にしており、従来のテキストプロンプト型 AI 動画生成ツールとは異なり、カメラワークやオブジェクトの動き、キャラクターの演技など、シーンごとの詳細なコントロールができます。

技術的には、 3D 認識機能によりカメラアングル、キャラクターポーズ、背景を撮影後に調整でき、物理法則に基づいた自然な動きやシーンの相互作用を実現します。例えば、草地を走るバイソンを車に置き換えた場合、それにより変化する草や土の動きを自然に適応させることができます。また、テキストでの指示だけでなく、既存の手持ち映像をアップロードして編集することも可能で、より柔軟な制作アプローチを提供しています。

出力品質は、ネイティブ 1080p で最大 5 秒、 24fps のシャープな映像を生成でき、従来の AI 動画モデルよりもノイズが少なく、映画や広告などプロの現場でもそのまま使える品質を実現しています。カメラの自由な移動・パン・ズーム、オブジェクトやキャラクターの動き・ポーズ指定、既存映像からの動作転写、シーン内の特定要素だけを修正できるインペインティングなど、多彩なコントロール機能を備えています。

最も重要な特徴は、完全にライセンスクリアな学習データを使用していることです。インターネットから無断収集したデータではなく、全て明確なライセンス契約下で提供された高解像度映像のみで学習しており、商用利用時の法的リスクを大幅に低減しています。これにより、 Disney や Universal が Midjourney を著作権侵害で訴えるなど AI の法的問題が議論される中、ハリウッドの信頼を獲得する可能性があります。

開発は、社内スタジオ Asteria との連携で現役映像制作者の意見を反映しながら半年以上かけて行われました。従来の「ブラックボックス」的 AI ツールではなく、現場のワークフローに自然に組み込める設計が特徴です。開発チームには DeepMind のビデオモデルチームで主導的役割を果たした研究者らが参加しています。

料金はクレジット制で、 100 クレジットが 14.99 ドル(約 2200 円)、 250 クレジットが 34.99 ドル(約 5100 円)、 1000 クレジットが 149.99 ドル(約 2 万 2000 円)となっています。 Moonvalley のウェブサイトや ComfyUI を通じて利用でき、エンタープライズ版では独自の IP を使用したカスタマイズも可能です。

インディペンデント映画の制作者からは、制作コストが 20 ~ 40 %削減され、資金調達の課題が多い場合でも創造性を発揮できるとのコメントがあります。高額な機材や大規模な撮影チームがなくても、 AI の力でハリウッド級の映像表現が可能になり、映像制作の「民主化」を推進しています。