中国の AI スタートアップである Moonshot AI (月之暗面)は、2026 年 1 月末、同社のフラッグシップモデルの最新版となる「Kimi K2.5」を発表し、そのモデルウェイトをオープンソース(オープンウェイト)として公開しました。このモデルは 1 兆パラメータという巨大な規模を誇り、現在の最先端商用(クローズド)モデルである OpenAI の「GPT-5.2」や Anthropic の「Claude 4.5 Opus」に匹敵、あるいは一部の指標ではこれらを上回る性能を示していると報じられています。
Kimi K2.5 は、総計 1 兆 400 億(1.04T)パラメータを持つ Mixture-of-Experts (MoE)アーキテクチャを採用しています。特筆すべき点は、推論時にアクティブとなるパラメータが 320 億に抑えられていることであり、巨大モデルでありながらハードウェアへの負荷と推論コストのバランスが最適化されています。学習データにはテキスト、画像、ビデオを含む計 15 兆トークンが用いられ、視覚情報とテキスト情報を統合して理解する能力が飛躍的に向上しました。
Moonshot AI が公開したデータによると、Kimi K2.5 は「推論」「コーディング」「エージェント」という主要指標において卓越した結果を残しています。特に、ツールを活用した複雑な推論能力を測定するベンチマーク「Humanity’s Last Exam (HLE-Full)」において 50.2% を記録し、GPT-5.2 (45.5%)や Claude 4.5 Opus (43.2%)を上回りました。また、OCR 性能においても 92.3% という高い精度を誇り、画像から UI デザインを読み取ってコードを生成する能力も世界トップクラスと評価されています。
機能面での最大の革新は、単一の AI としての枠を超えた「Agent Swarm (エージェント・スウォーム)」構造の導入です。これは、複雑なタスクに対して最大 100 個の専門的なサブエージェントを自律的に生成・配置し、並列して作業を進める仕組みです。これにより、従来のエージェントと比較して最大 4.5 倍の高速化を実現し、大規模なリサーチタスクを数分で完了させることが可能になりました。
今回のリリースに合わせ、ターミナルベースのコーディングエージェント「Kimi Code」も公開されました。VSCode などの主要な IDE と連携可能で、動画やスクリーンショットを用いた視覚的なデバッグに対応しています。
Kimi K2.5 は修正 MIT ライセンスの下で提供され、商用利用も可能です。API 利用料は 100 万トークンあたり入力 0.60 ドル(約 93 円)、出力 3 ドル(約 465 円)と設定されており、同等の性能を持つ商用モデルと比較して非常に高いコスト競争力を持ちます。
また、オープンソースコミュニティによる軽量化(量子化)も急速に進んでいます。これにより、本来であればデータセンター級の設備が必要な 1 兆パラメータの超巨大モデルですが、ハイエンドなコンシューマー向け GPU や小規模なサーバー環境(ローカル環境)での実行が現実的になってきています。
Moonshot AI による Kimi K2.5 の公開は、オープンソースモデルがクローズドモデルに追いつきつつあることを象徴する出来事と言えるでしょう。AI 開発の焦点が、単なるモデルの巨大化から、多数のエージェントを協調させる「スケーリング・アウト」へと移行しており、今後の業界動向に大きな影響を与えると考えられます。
