フランスの AI 企業 Mistral AI は 2025 年 8 月 12 日、最新の言語モデル「 Mistral Medium 3.1 」を発表しました。この新バージョンは前モデルの Medium 3.0 から全体的な性能向上を実現し、特に文書生成能力(クリエイティブライティング能力)で大幅な改善を見せています。
新モデルは推論、コーディング、マルチモーダル能力の強化が図られており、プログラミングタスクや科学技術分野での応用がさらに向上しています。長文生成や複雑な文脈把握も得意分野とし、最新の transformer 設計により従来モデルよりも高速かつ高精度な処理を実現しています。
性能面では、複数のベンチマークで前モデルを上回る結果を示しています。Arena Hard v2 では 67%(前バージョンは 58%)、Wild Bench v2 では 75%(前バージョンは 70%)のスコアを記録しました。特に注目すべきは、クリエイティブライティングのベンチマークで 72%のスコアを獲得し、前バージョンの 55%から大幅に向上している点です。
企業向けの機能も充実しており、オンプレミスやクラウド環境での柔軝な運用に対応しています。API による統合やカスタムワークフローへの組み込みも容易で、企業用途に最適化されています。コスト効率の面では、従来の大型モデルと比較して約 8 分の 1 の運用コストで他の商用AIと同等のパフォーマンスを実現しており、長期運用にも適した仕様となっています。
文章生成能力では、物語や詩、創作分野において Claude Sonnet 3.7 や Llama 4 Maverick 、Command R+ などの競合大型モデルに匹敵する出力品質を持つとされています。複雑な文脈や会話処理にも強く、自然なトーンでの生成が向上しており、ライティング支援ツールとしての実用性が高まっています。
現在、Mistral のチャットサービス「 Le Chat 」では新モデルがデフォルトとして採用されており、API 経由でも「 mistral-medium-2508 」として利用可能です。Amazon Sagemaker などの主要クラウドプラットフォームでも順次展開される予定となっています。
一方で、コミュニティからは賛否両論の声が上がっています。性能向上を評価する声がある一方で、一部のユーザーからは未確認ながら、他モデル( DeepSeek )の技術を基にした派生版ではないかとの指摘も出ています。また、今回のモデルもオープンソースではなかったことから、Mistral AI がオープンソース路線から距離を置いているのではないかという懸念も表明されています。