中国の AI スタートアップ MiniMax が 2025 年 6 月 18 日に発表した新しい AI 動画生成モデル「 Hailuo 02 」が、世界的な注目を集めています。開発段階では「 Kangaroo 」というコードネームでテストされていたこのモデルは、世界的な AI 動画モデル評価プラットフォーム「 Artificial Analysis Video Arena 」のリーダーボードの「 Image-to-Video」部門で第 2 位にランクインし、 Google の Veo 3 Preview を上回る評価を獲得しました。
現在のランキングは、 1 位が ByteDance の Seedance 1.0 ( ELO スコア 1,352 )、 2 位が Hailuo 02 ( 1,328 )、 3 位が Veo 3 Preview ( 1,243 )となっており、中国企業が上位 2 位を独占している状況です。
Hailuo 02 の技術的な特徴は、新アーキテクチャ「 Noise-aware Compute Redistribution ( NCR )」の採用にあります。この技術により、従来モデルと比べてトレーニング・推論効率が 2.5 倍に向上しました。また、パラメータ数は 3 倍、学習データは 4 倍に増強され、より高精度で多様な動画生成が可能になっています。
生成性能も大幅に向上しており、 1080p 解像度で最大 10 秒の動画生成に対応しています。特に体操やアクロバット、ライオンの火の輪くぐりなど、従来の AI モデルが苦手としていた複雑な動きや物理シミュレーションの表現で高い評価を得ています。指示通りの映像生成(プロンプト忠実度)やダイナミックな映像表現においても、競合他社を上回る性能を発揮しています。
価格面でも競争力があり、 768p ・ 6 秒、 768p ・ 10 秒、 1080p ・ 6 秒の 3 バージョンが提供され、 6 秒 1080p で約 0.44 ドル(約 64 円)程度と、競合他社と比べて低価格で利用可能です。
実際のユーザー評価でも、 Hailuo 02 は Veo 3 よりもプロンプト忠実度や映像品質で高い評価を受けています。特に音声が不要な動画生成では Hailuo 02 が優勢との声が多く聞かれます。ただし、 Veo 3 は音声統合や Google のエコシステムとの連携が強みとなっています。
現時点では音声サポートがないことや、 1 本の動画生成に約 20 分かかるため大規模利用には課題がありますが、 MiniMax は今後、音声機能の追加や生成速度の改善を計画しています。
Hailuo 02 の成功は、中国の AI 産業の技術的進歩を示す象徴的な出来事として業界で注目されており、 AI 動画生成分野における競争がさらに激化することが予想されます。