Alphabet 傘下 Isomorphic Labs が AI 設計のがん治療薬で初のヒト臨床試験へ

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米 Fortune 誌が報じたところによると、Alphabet 傘下の AI 創薬企業 Isomorphic Labs は、 AI によって設計されたがん治療薬のヒト臨床試験を開始する準備を進めています。これは AI が創薬プロセスの初期段階から臨床試験まで進む世界初の試みとなり、創薬業界に大きな変革をもたらす可能性があります。

Isomorphic Labs は、 Google DeepMind からスピンアウトした 2021 年設立の企業で、 AI 技術を活用して新薬の設計・開発を加速させることを目指しています。特に、 DeepMind が開発したタンパク質構造予測 AI 「 AlphaFold 3 」の技術を基盤にしており、タンパク質や分子の複雑な構造や相互作用を高精度で予測できます。

同社が開発を進めているがん治療薬は、 AI がタンパク質の構造を解析し、最適な薬剤分子を設計したもので、 2025 年後半には動物実験を経て初めて人間に投与する「ファースト・イン・ヒューマン試験」が開始される予定です。この試験では少数の患者を対象に、極めて慎重に安全性と適切な投与量を確認しながら段階的に進められます。これにより、従来よりも迅速かつ正確に新しい薬剤候補を特定できるようになりました。

従来の創薬プロセスでは、新薬開発に 10 年以上かかり、成功率も低く、コストも膨大でした。しかし AI による分子設計では、シミュレーションで有望な候補のみを選び出せるため、臨床試験の失敗率やコストを大幅に削減できる可能性があります。

同社は「すべての病気を AI で解決する」という壮大なビジョンを掲げており、将来的には AI が病気を特定し、ワンクリックで最適な薬を設計できる世界を目指しています。具体的には「疾患を入力し、ボタンを押すだけで薬剤設計が出力される」システムの構築を計画しています。

資金面では、 2025 年 4 月に 6 億ドル(約 885 億円)以上の資金調達に成功し、ノバルティスやイーライリリーといった大手製薬企業からも数十億ドルの資金提供を受けて共同プロジェクトを推進しています。これらのパートナーシップにより、 AI 創薬の実用化が加速されています。

今回のがん治療薬で成功を収めれば、免疫疾患や神経変性疾患など他の疾患領域への応用拡大の足がかりとなります。 AI と人間の専門家が協働することで、新しい治療法の開発がさらに加速すると期待されています。