H&M、AI デジタルツインでモデル 30 人と新たなマーケティング戦略を展開

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スウェーデンのアパレル大手 H&M が、ファッション業界に新たな風を吹き込む革新的な取り組みを進めています。最新の報道によると、同社は 30 人のモデルと提携し、AI 技術を活用したモデルの「デジタルツイン」を作成し広告キャンペーンに使用する計画を進めています。

このプロジェクトでは、モデルたちが自身のデジタルツインの所有権を保持できるようになっています。第三者の AI プロバイダー「Uncut」との協力のもとで作成されたデジタルツインは、モデル自身に権利が帰属し、H&M だけでなく他のブランドの広告でも活用できるようになります。

報酬体系については、H&M は従来のモデル契約と同様の契約を行う意向を示しています。デジタルツインがキャンペーンで使用される際、モデルは使用権に基づく報酬を受け取ることができ、金額については、従来同様、ブランド、市場範囲、キャンペーン期間などを基に交渉で決定される仕組みです。

この取り組みの背景には、AI 技術がファッション業界にもたらす変革への対応があります。デジタルツインを活用することで、物理的な撮影なしに多様なキャンペーンを迅速かつ効率的に展開できるメリットがあります。また H&M は、モデル自身の仕事や権利を保護する観点から、彼ら(彼女ら)もメリットを享受できるようにすることで AI 活用に積極的に巻き込むことが最善と考えています。

参加モデルからは「仕事の場所や方法に関する前例のない柔軟性をもたらした」という肯定的な声がある一方、「興奮と不安が入り混じった気持ち」という複雑な感情を抱くモデルもいるようです。

H&M のこのプロジェクトは、グッチやコカ・コーラなど他のブランドも生成 AI をマーケティングに取り入れている流れに沿ったものであり、ファッション業界における AI 活用の先進的な取り組みとして注目されています。今後、写真家やスタイリスト、ヘアメイクアーティストなど、制作に関わる他の職種へどのような影響を与えるかについては、まだ完全には把握されておらず、業界内での議論が続いています。


筆者の視点:今回の H&M とモデル 30 名が示した AI 活用の方向性は、今の時代の流れからすればごく自然な選択と言えます。昨年、スカーレット・ヨハンソンが自身の声を OpenAI の VoiceMode に使われることを拒否し、さらにデモで自分の声に酷似した声が採用されたとして訴訟を起こしたとは、まったく対照的な姿勢です。

ハリウッドをはじめとするアメリカのエンターテインメント業界では、依然として AI に対する反発が根強く見られますが、社会全体で AI の活用が広がっている中で、この業界だけが取り残されるとは考えにくいでしょう。今回の H&M のように、自分の声や姿を使う際には正当な報酬を得る契約を結ぶことで、AI の波にうまく乗るという姿勢のほうが、現実的で賢明だと思われます。

出演者ではなく制作側にとっては、「 AI に仕事を奪われるのでは」という不安もあるかもしれません。しかし、AI を使いこなすことでむしろ仕事の幅が広がると捉えれば、より前向きな姿勢で AI 活用に取り組むことも可能なのではないでしょうか。