Google DeepMind が動物の声を聞き分ける AI モデル 「 Perch 2.0 」をオープンソース化

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Google DeepMind は 2025 年 8 月 7 日、生物音響データを解析する AI モデル「 Perch 2.0 」をオープンソース化し、公開しました。このモデルは絶滅危惧種の追跡や生態系のモニタリングに活用でき、生物多様性保全の分野に大きな変化をもたらしそうです。

従来の Perch は主に鳥類の鳴き声に特化していましたが、新バージョンでは対象範囲を大幅に拡張しました。哺乳類、両生類、魚類はもちろん、サンゴ礁や海洋環境の音まで解析できるようになっています。数百万時間に及ぶ音声データを処理し、種の特定や個体数の推定を従来手法の 50 倍の速度で実行します。これにより、研究者はデータ処理作業から解放され、より本質的な保護活動に集中できるようになります。

技術面では、 EfficientNet をベースとした軽量設計で大規模データにも対応可能です。高度な機械学習技術により、雑音の多い自然環境の中からでも特定の動物の声を高精度で聞き分けることができます。また、新たな種の音声パターンを学習させる際も、わずか 1 時間程度で識別システムを作ることができる仕組みになっています。

実際の保護現場では既に成果が現れています。ハワイ固有の絶滅危惧種ハニークリーパーの生息調査や、オーストラリアで新たに発見されたクビワミフウズラの個体群確認などに活用されています。 Cornell 大学の BirdNet Analyzer や BirdLife Australia 、ハワイ大学といった機関のアプリケーションにも組み込まれており、人間の目や耳では見つけることが困難だった希少種の発見に貢献しています。

同時に、サンゴ礁専用の「 SurfPerch 」というモデルもリリースされました。 400 時間を超える音声データで訓練されており、フィリピンやインドネシアの海洋環境監視で活用が始まっています。

今回のオープンソース化で、世界中の保護団体や研究者が無償でこの技術を利用できるようになります。予算に制約のある非営利組織や途上国の研究機関でも、最先端の AI 技術を導入できる環境が整いました。従来であれば人手による分析に何年もかかっていた作業が AI によって迅速に処理できるため、絶滅の危機に瀕した種への対応スピードも格段に向上することでしょう。

Perch 2.0 は特別な専門知識がなくても使えるよう設計されています。音響データから「どの動物が、どこに、どれくらいいるのか」をリアルタイムで把握できるこのツールは、今後の環境保全活動に貢献していくと期待されています。