GitHub 調査:開発者の役割が AI 時代に大きく変容

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GitHub が AI ツールを日常的に利用する 22 名の開発者にインタビュー調査を実施した結果、ソフトウェア開発者の役割が AI の登場により根本的に変化していることが分かりました。調査結果は 2025 年 8 月 3 日に GitHub CEO の Thomas Dohmke 氏により公表されています。

調査では、開発者が AI との関わり方において 4 つの段階を経ることが明らかになりました。

  1. AI 懐疑者: まずは部分的に AI を使い始めるものの、期待したほどの結果が得られず満足度は低い状態。「所詮は話題性だけ」と感じがちだが、挑戦し続けることで AI の使いどころに気づくようになる
  2. AI 探求者: デバッグやテンプレート的なコード作成などで AI 活用が進む段階。失敗したら何度もやり直し、プロンプトを工夫しながら AI の限界を理解する
  3. AI 協働者: AI と共にタスクを計画し、複数ファイル編集や大規模な作業も任せられる感覚を持つ。社内で他の同僚とのナレッジ共有や有効なプロンプトのシェアも盛んになる
  4. AI 戦略家: 機能追加や大規模リファクタリング、マルチエージェント活用などの本格運用に自信を持つ。自分の仕事は「 AI への委任と成果の検証」に移り、アーキテクト的立場に変化する

調査で特に注目されるのは、対象となった開発者の半数が「 2 年以内」に、残り半数が「 5 年以内」に AI がコードの 90% を書くようになると予測していることです。それでも開発者たちは、自分の価値が減るとは考えていません。むしろ「コードを書く人」から「コードを成り立たせる人」への進化と捉えており、中には新しい職種として「 Creative Director of Code (コードのクリエイティブ・ディレクター)」という考え方を提示する人もいました。

この変化に伴い、開発者に求められるスキルも大きく変わってきています。今後重要になるのは、各種 AI ツールを使いこなす AI リテラシー、 AI に適切に仕事を委任するオーケストレーション能力、人間と AI が協働するためのコミュニケーションスキル、 AI が生成したコードを検証・品質管理する基本的な技術力、そしてプロダクト全体を設計するシステム設計力です。単純なコード実装ではなく、 AI エージェントを使いこなすアーキテクト的な立場への転換が求められています。

教育分野への影響も大きく、これまでの「 API の記憶」や「ループ処理を正確に書く技術」重視から、コードの意図を AI に的確に説明する力、 AI が生成した結果を検証・修正する力、問題を抽象化して分解する力が重要になると指摘されています。プログラミングに関わる教育カリキュラムの大幅な見直しが必要になりそうです。

調査対象の開発者たちは、この変化を危機として捉えるのではなく、自分自身のスキルアップや新しい挑戦のチャンスとして前向きに受け止めています。「普通のエンジニアだった自分にとって、 AI は自分をもう一段階成長させるきっかけ」と語る人もおり、 AI とどう協業して最大限活用するかが今後のキャリアを左右するという共通認識を持っています。