企業のAI投資動向 – 予算制約と投資回収への懸念

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企業のAI導入に対する姿勢について、いくつかの傾向が明らかになったようです。

現在、FRBが高金利政策を維持しているため、企業を取り巻くマクロ経済環境は厳しい状況にあります。そうした中、企業のIT予算は限られており、2024年のIT支出の伸び率は、当初予想の4.3%から3.4%に下方修正されています。

IT予算の中でAIプロジェクトに割り当てられる資金は、42%の企業が他の部門から予算を転用しています。大企業の場合、この割合は50%に達します。また、生成AI(Generative AI)への投資回収期間についても、7〜12ヶ月を見込む企業の割合が増加し、以前よりも回収までに時間がかかるとの見方が広がっています。全体的に新しい資金を投じることに対して慎重な姿勢が見られます。投資してもすぐに収益の影響が現れるかどうかについて懐疑的な企業が多く、積極的にフルスロットルで投資を行っている様子は見受けられません。

企業におけるAIの主な活用事例は、テキストの要約、カスタマーサポートのチャット、コード生成、マーケティング文章の作成など、AIチャットで実現可能なものがほとんどです。新薬開発やがん研究、自動運転などのより野心的な取り組みは注目を集めますが、コストがかかるなどの理由から、まだ広く普及するには至っていません。さらに、驚くべきことに、18%の企業は生成AIの導入をまだ検討していないと回答しています。その理由として、AIを提供する企業間の競争が激しすぎて、どのソリューションを採用すべきか判断が難しいことが挙げられています。もう少し待って、勝者が明確になり、他社の成功事例を確認してから検討するという姿勢を取っている企業が一定数存在する、ということのようです。

次に、AIを採用している企業が利用するベンダー市場では、ライバルに先行したMicrosoftとOpenAIのパートナーシップが大きな成功を収めています。次点ではGoogleがAWS(Amazon Web Services)を追い上げ、AIクラウドの顧客基盤を拡大しています。Anthropic、Cohereなどの小規模プレイヤーも着実に成長していることが、調査から明らかになっています。

今回の調査から、企業はAIの可能性の大きさを認識しているものの、目に見える収益インパクトをもたらすかどうかについてはまだ懐疑的で、予算配分に躊躇している様子が浮き彫りになりました。成功事例を見てから導入を決定しようとする企業がまだウェイティングリストに残っているということは、逆に言えば、AIの市場規模はこれから拡大していく余地があるとも解釈できるかもしれません。