音声合成 AI で知られる ElevenLabs は 2025 年 8 月 5 日、同社初となる本格的な音楽生成サービス「 Eleven Music 」を正式にリリースしました。このサービスは、自然言語のプロンプトを使用してスタジオ品質の楽曲を生成できる多言語対応の AI モデルです。
Eleven Music の最大の特徴は、「壮大な映画音楽スタイル」や「 1980 年代のシンセウェーブ」といった自然言語のプロンプトから、ボーカル入りまたはインストゥルメンタルの楽曲を数分で生成できる点にあります。英語・日本語・スペイン語・ドイツ語など多言語でのボーカル生成に対応し、歌詞も AI が自動生成するほか、カスタム歌詞の指定も可能です。
生成後の編集機能も充実しており、楽曲の個々のセクション(イントロ、ヴァース、コーラス)ごとに音色や歌詞を細かく調整できます。楽器やボーカルスタイル、テンポの変更も直感的な UI で行えるため、映画、テレビ、ゲーム、広告といった幅広い用途に対応します。
注目すべきは、商用利用への対応です。ElevenLabs は Merlin Network や Kobalt Music Group といった独立系アーティスト向けのデジタル音楽出版プラットフォームと提携し、AI トレーニングに使用する音楽のライセンスを適切に取得しています。これにより、生成された楽曲をほとんどの商用プロジェクトで合法的に使用可能です。
この取り組みは、競合他社の Suno や Udio が著作権付き素材の無許可使用でアメリカレコード協会( RIAA )から訴訟を受けている状況とは対照的です。ElevenLabs はアーティストがオプトインで参加し、AI トレーニングに使用された楽曲数や人気度に応じてロイヤリティを受け取る仕組みを採用することで、著作権侵害のリスクを軽減しています。
技術面では、44.1kHz の高音質で複雑なプロンプトに対応できる「深い音楽的知識」を持つ AI エンジンを搭載し、特にボーカルのリアルさや歌詞の正確な反映において競合を上回ると評価されています。また、有名アーティストの名前や既存の歌詞の使用をブロックするセーフガード機能も備えており、暴力やヘイトスピーチを誘発するコンテンツの生成も禁止されています。
現在は Web サイトで利用可能で、8 月中は 50% 割引キャンペーンを実施中です。今後は API の公開や会話型 AI プラットフォームとの統合も予定されており、マーケティングキャンペーンやリアルタイムコンテンツ生成など、さらなる自動化が期待されています。