中国DeepSeek、NVIDIA最新AIチップの密輸疑惑が浮上

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中国のAIスタートアップ企業 DeepSeek が、米国の輸出規制対象である NVIDIA の最新AIチップ「Blackwell」を数千個規模で違法に輸入している疑いが浮上し、国際的な注目を集めています。この疑惑は、米国のIT専門メディア「The Information」が複数の情報源を元に報じたものです。

報道によると、密輸は複雑な経路をたどったとされています。チップはまず、輸出規制の対象外である東南アジアなどの第三国にあるデータセンターへ合法的に出荷されます。そこで NVIDIA の OEM パートナーによる設置検査を経て規制遵守が確認された後、サーバーは解体され、GPU などの主要部品が個別に中国国内へ持ち込まれたと見られています。これらの部品は中国で再組み立てされ、DeepSeek の次世代AIモデル開発に使用されているとのことです。特に、8つの GPU を搭載する HGX B200 サーバーは、その比較的小さなサイズから密輸に適していると指摘されています。

DeepSeek は、OpenAI の「ChatGPT」に匹敵する性能を低コストで実現したとされるモデルで知られる急成長企業です。同社は中国のヘッジファンドによって設立され、規制強化前の 2021 年にはすでに 1 万個の NVIDIA 製 GPU を確保していたとされています。今回の報道は、中国政府が国産チップ開発を推進する中でも、主要なAI企業が依然として米国製の高性能ハードウェアに強く依存している実態を浮き彫りにしました。

この疑惑に対し、NVIDIA は具体的な証拠の提供は受けていないとして密輸を否定し、「到底ありそうもない」とコメントしつつも、提供された情報はすべて調査するとしています。一方、同社はチップの稼働場所を特定できる位置追跡技術を開発したとも報じられています。この技術は Blackwell 世代のチップに優先的に搭載される予定ですが、顧客によるインストールが任意であるため、その実効性には疑問の声も上がっています。

この一件は、AI分野での優位性を維持しようとする米国と、それに追いつこうとする中国との間で激化する技術競争を象徴しています。米国の厳格な輸出規制にもかかわらず、迂回ルートを通じたチップの確保が行われている可能性は、輸出管理の執行における根深い課題を示しています。