企業向けの AI モデルを提供しているカナダの Cohere は 2025 年 8 月 28 日、企業向けの新しい AI 翻訳モデル「 Command AI Translate 」を発表しました。このモデルは 23 の主要な言語に対応し、複数の翻訳ベンチマークで既存の主要モデルを上回る性能を実現したとしています。
高精度な翻訳性能とセキュリティを両立
Command AI Translate の最大の特徴は、業界最高水準の翻訳精度です。 OpenAI の GPT-5 、 DeepSeek-V3 、 Google Translate などの既存モデルを複数のベンチマークで上回る性能を示しています。特に注目すべきは「 Deep Translation 」機能で、複数ステップの精査・推論機構により、従来よりも複雑なビジネス文書の翻訳において高品質な出力を実現しています。
また企業向けサービスとして、セキュリティ面での配慮も徹底されています。オンプレミス環境で運用が可能で、企業内サーバや独自インフラへの展開により、機密データが外部に共有されることを防げます。これは、機密性の高い文書を扱う企業にとって重要な機能となっています。
効率性とカスタマイズ性を重視した設計
技術仕様面では、 1110 億( 111B )パラメータとなっており、わずか 1 ~ 2 台の GPU ( A100 または H100 )で動作可能です。 16k トークン( 8k 入力 + 8k 出力)のコンテキスト長を持ち、競合モデルと比較して必要な計算リソースを大幅に削減しています。
さらに、ユーザー固有データを活用したファインチューニングや、業界特化型のカスタムモデル開発にも対応しています。出力のトーンやコンプライアンスルールへの最適化まで、企業の細かなニーズに応える柔軟性を提供しています。
実用性重視のアプローチで差別化
Cohere は困難な翻訳例を重点的に学習させる独自の手法により、モデルの微調整を行っています。これにより質の低いデータに頼らず、より精度の高い翻訳性能を実現しています。これにより、実際のビジネス場面で遭遇する複雑な翻訳タスクに対する精度向上を実現しています。
同社は OpenAI や Anthropic といった汎用 AI 企業との差別化として、特化型モデルによる優れたパフォーマンス提供を戦略としています。 Command AI Translate は、英語、フランス語、スペイン語、日本語、アラビア語、ヒンディー語など 23 ヶ国語の主要ビジネス言語に対応し、グローバル企業の国際展開を支援する実用的なソリューションとなっています。
企業向け AI 翻訳市場では、従来の汎用モデルではカバーしきれない「精度・セキュリティ・効率性・カスタマイズ性」の全てを満たすニーズが高まっており、 Cohere の今回の発表はこうした市場要求に応える製品として注目を集めそうです。