米国のテクノロジーメディア「The Information」の報道により、TikTokの運営会社であるByteDanceが、米国のクラウドコンピューティング企業Oracleから最先端のNvidiaのH100チップをレンタルし、米国内でAIモデルのトレーニングを行っていることが明らかになりました。
2022年以降、米国政府はNvidiaなどの企業が中国に最先端のAIチップを販売することを禁止しています。今回ByteDanceはOracleからチップをレンタルしているだけで、中国企業に直接販売しているわけではないため、技術的には認められていますが、この行為は米政府のチップ規制の精神に反するものと言えるでしょう。また、AlibabaやTencentも同様のスキームを検討しているとのことです。
ByteDanceは、TikTokの米国事業を中国の指導部から分離していると主張する「Project Texas」を盾にこの取り決めを行っていますが、元従業員はProject Texasを「うわべだけ」と表現しています。
米国商務省は、この抜け穴を塞ぐ可能性がありますが、クラウドプロバイダー各社は追加要件に対応する負担が大きすぎると主張しているため、規則はまだ実現していません。たとえ米国がこの抜け穴を塞ぐことができても、中国のクラウドプロバイダーが米国内のデータセンターでNvidiaのチップを利用してAIモデルのトレーニングを行うことを防ぐのは難しいでしょう。
TikTokについては、米国での利用を禁止する法案が成立するなど、かなりセンシティブな状況にあります。ただ、実際には米国の若者の間に深く浸透しており、完全に禁止するのは難しい状況にもなっています。
米中は政治的・経済的な対立を徐々に深めており、AIの分野もその火種の一つになっています。今後この対立は激化することはあっても沈静化することはなさそうです。