TikTok の親会社 ByteDance が 2025 年 4 月、新しい AI モデル「Seed-Thinking-v1.5」を発表しました。このモデルは 2,000 億( 200 B)パラメータ(そのうち 200 億( 20B )がアクティブ)を持つ推論モデルで、 Mixture of Experts(MoE)アーキテクチャを採用しています。
Seed-Thinking-v1.5 は、特に数学、プログラミング、科学的質問応答など、論理的推論を必要とする分野で優れた成果を上げており、中国の AI スタートアップ DeepSeek の推論モデル「 R1 」を複数のベンチマークで上回ったとされています。
具体的には、数学分野の AIME 2024 では 86.7%(R1 は 79.8%)、プログラミングの Codeforces では pass@8 で 55.0%(R1 は 45.0%)、科学的質問の GPQA では 77.3%の精度を達成。また論理推論の ARC-AGI では 39.9%で最先端レベルに到達し、一般的なタスクでは R1 に対して 8%高い勝率を示しています。
技術的な特徴としては、VAPO 強化学習フレームワークを採用し、複雑な推論能力を強化。さらに、数学的推論やコード生成など、タスクごとに専用サブネットワークを割り当てる層状計算最適化を行い、効率を向上させています。また、低精度の浮動小数点演算(FP8)を活用して大規模モデルの計算コストを削減する工夫も施されています。
このモデルの登場は、 AI 競争の激化を示す動きとして注目されています。 DeepSeek R1 が低コストで高性能なモデルを市場に投入した後、中国産のモデルが次々と発表されていますが、今回の ByteDance の Seed-Thinking-v1.5 は競合を上回るさらに効率的で強力な選択肢として登場しました。これにより、 OpenAI 、 Google 、 Alibaba 、 Tencent などとの競争が加速することが予想されます。
ただし、GitHub上で技術的な詳細は公開されているものの、このモデル自体はオープンソースではないようです。これまで中国から発表される多くのモデルはオープンソースで提供されてきましたが、性能の向上に伴い、今後はクローズドなモデルへと移行していくのか、その動向が注目されます。