米 Bloomberg が報じたところによると Apple と Meta が AI 分野での競争力強化を目指し、 AI 検索エンジンを開発するスタートアップ「 Perplexity 」の買収をめぐって激しい競争を繰り広げています。両社とも Google や OpenAI といったライバルに対抗するため、有力な AI 企業や優秀な人材の確保に積極的に動いています。
Perplexity は 2022 年創業の AI 検索エンジンスタートアップで、従来の検索結果のリンク一覧ではなく、 AI が直接質問に答える形式のサービスを提供しています。月間 7800 万件のクエリを処理し、評価額は 15 億ドル(約 2200 億円)を超える急成長企業として注目されています。
Meta は 今年 4 月末から 5 月初めにかけて Perplexity の買収を打診しましたが、財務条件の不一致により合意には至りませんでした。現在は他の AI 企業への投資や人材獲得に注力しており、先日発表された Scale AI には 143 億ドル(約 2.1 兆円)の巨額投資を行っています。
一方、 Apple も Perplexity の買収について社内で検討を進めています。実現すれば約 140 億ドル(約 2 兆円)規模となり、 2014 年の Beats 買収( 30 億ドル)を大きく上回る Apple 史上最大の買収案件になる可能性があります。ただし、現時点では社内議論の段階で、正式な交渉には至っていません。
Apple が Perplexity に関心を示す背景には、 Google への依存からの脱却という重要な戦略があります。現在 Apple は Safari のデフォルト検索エンジンとして Google から年間約 200 億ドル(約 2.9 兆円)の収入を得ていますが、米司法省による独占禁止法訴訟の影響でこの提携関係が揺らいでいます。
また、 Apple は AI 分野で OpenAI や Google に遅れをとっているとの指摘もあり、 Siri の進化や iPhone への AI 統合を急いでいます。 Perplexity の技術と人材を獲得できれば、独自の AI 検索エンジン開発や AI 機能の強化に大きく役立つと期待されています。
Meta も独自の大規模言語モデル「 Llama 」シリーズや AI メガネなどで AI 分野に積極投資していますが、さらなる技術力向上を目指しています。最近では OpenAI の共同創業者が設立した Safe Superintelligence や、元 GitHub CEO に関連する企業にも関心を示すなど、幅広く AI 企業や人材の獲得を模索しています。
ただし、 Perplexity の買収には課題も多く存在します。同社はウェブスクレイピングを巡る著作権侵害で BBC などから警告を受けており、買収企業にとって法的リスクとなる可能性があります。また、売上が約 1 億ドル程度で赤字運営の企業に対して 140 億ドルという評価額という点で、投資効果を疑問視する声もあります。
興味深いことに、 Samsung も Perplexity への投資を検討しており、米国で Galaxy ユーザー向けに Perplexity Pro の無料提供を始めています。この動きは Apple や Meta の買収計画に影響を与える可能性があります。
Bank of America は、 Apple が Perplexity を買収すれば株価上昇につながると予測し、買収を「ポジティブ」と評価しています。しかし、組織統合の難しさや規制上の課題も指摘されており、実現には時間がかかりそうです。