Menlo Ventures が発表した最新の「 LLM (大規模言語モデル)市場アップデート」によると、企業向け AI への支出が急拡大している中で、 Anthropic が OpenAI を抜いて市場のトップに躍り出たことが明らかになりました。
企業の AI への支出は引き続き急増しており、API への支出額が昨年 11 月時点の 35 億ドル(約 5150 億円)からわずか半年で 84 億ドル(約 1 兆 2350 億円)に倍増しました。これは、企業が PoC (概念実証)や開発段階から本番環境への移行を加速させていることを示しています。
市場シェアの変動が特に顕著で、 Anthropic のシェアは 32% と、 OpenAI ( 25% )や Google ( 20% )を抜いてエンタープライズ利用でトップとなりました。 OpenAI は 2023 年末時点で 50% のシェアがあったものの、 2 年間で半減しています。 Meta の Llama は 9% 、中国系の DeepSeek は 1% にとどまります。
急拡大したユースケースとして、 AI によるコード生成が「キラーアプリ」になり、 Claude ( Anthropic 社モデル)はこの分野で 42% と圧倒的なシェアを獲得しています。 OpenAI は 21% と大きく引き離される結果となりました。従来 GitHub Copilot が牽引していたこの市場が、 Claude を中心に約 19 億ドル(約 2790 億円)規模のエコシステムに成長しています。 特に 2024 年 6 月にリリースされた Claude Sonnet 3.5 、 2025 年 2 月の Sonnet 3.7 、そして最新の Claude Sonnet 4 と Opus 4 といった一連の高性能モデルが市場拡大の原動力となっています。
企業のモデル選定において、安さや速度よりも「パフォーマンス(性能)」を最重視する傾向が強まっており、最新モデルが登場すると数週間で一気に最新モデルへの置き換えが進みます。過去 1 年で企業の 66% は同一ベンダー内で最新モデルに切り替え、ベンダー自体を変更したのはわずか 11% でした。
一方で、オープンソースモデルの採用は横ばいから減少傾向にあります。企業利用の 13% がオープンソース(半年前は 19% )となっており、性能の悪さや社内運用にかかる負荷、中国系モデル利用への抵抗感が要因とされています。 Llama 4 など新モデルも実際の利用現場では伸び悩み、全体的にシェアは停滞傾向です。
企業の AI システムの計算処理費用において、実際のサービス運用に使われる「推論」への投資割合が大幅に増加しており、スタートアップでは 74% (前年 48% )、大企業でも 49% (前年 29% )が「学習」ではなく、推論用途となっています。
これらの調査結果から、企業向け AI 市場において OpenAI から Anthropic への大きな勢力交代が起きていることが分かります。企業がモデルを選ぶ際に性能を最優先するようになり、高性能な商用モデルに需要が集中する傾向が強まっています。企業市場においては、今後も AI 全般の高性能化やエージェント化を巡る競争がより一層活発化する見通しです。