Anthropicが、表計算ソフトウェアのMicrosoft ExcelにAIアシスタント「Claude」を統合するベータ版「Claude for Excel」をリリースしました。特に金融専門家のワークフローを効率化し、AIによるデータ分析の能力を高めることを目指しています。
「Claude for Excel」はExcelのアドインとして提供され、ユーザーはスプレッドシートを開いたままClaudeと対話できます。複雑な数式の意味を解説させたり、#REF!などのエラーの原因を特定して修正案を提示させたり、ゼロからテンプレートを作成させたりすることが可能です。これにより、これまで手作業で行っていた分析やデバッグにかかる時間を大幅に削減できると期待されています。
さらにAnthropicは、金融サービス分野への注力を明確にするため、新たなデータコネクタと「Agent Skills」も発表しました。LSEG(ロンドン証券取引所グループ)やMoody’sといったプラットフォームと連携するコネクタにより、リアルタイムの市場データや企業情報へのアクセスが可能になります。また、割引キャッシュフロー(DCF)モデルの構築や比較企業分析といった特定のタスクに特化したスキルも提供され、より高度で専門的な分析を支援します。
Microsoft ExcelへのAIの統合は、Microsoft自身のCopilotと直接競合するものであり、企業の生産性ツールにおけるAIの主導権争いが激化していることを示しています。Anthropicは、リアルタイムデータと特化スキルを組み合わせることで、静的なスプレッドシートを動的な意思決定ツールへと変革しようとしています。AIが金融業界の「オペレーティングシステム」となる未来を見据えた、戦略的な一手と言えるでしょう。ただし、現時点ではベータ版であり、ピボットテーブルなどの高度な機能には未対応で、AIが生成する情報の正確性については人間による検証が推奨されています。
