AIスタートアップの Anthropic が、2026年にも新規株式公開 (IPO) を目指し、準備を本格化させていると報じられています。この動きは、最大のライバルである OpenAI との「IPO競争」を加速させ、AI市場の新たな局面を告げるものとなりそうです。
英フィナンシャル・タイムズ紙によると、Anthropic は Google や LinkedIn の IPO を手掛けた法律事務所を起用し、上場準備に着手したとのことです。また、Airbnb の IPO を成功させたクリシュナ・ラオ氏を最高財務責任者 (CFO) として迎えるなど、組織体制を「研究開発ラボ」から「上場企業」へと移行させています。一方で、同社の広報担当者は上場の時期や実施について決定事項はないとコメントしており、慎重な姿勢を崩していません。
Anthropic の事業は急速に拡大しています。チャットボット「Claude」を主力製品とし、年間経常収益 (ARR) はこの 8ヶ月で 10 億ドル (約 1,570 億円) から 50 億ドル (約 7,850 億円) へと急増しました。同社は最近の資金調達で企業価値を大きく高めており、現在も 3,000 億ドル (約 47.1 兆円) から 3,500 億ドル (約 55 兆円) を超える評価額での資金調達を協議中とされています。Alphabet (Google) や Amazon といった巨大テック企業が主要投資家として名を連ねており、その期待の高さがうかがえます。
この動きが注目される背景には、競合 OpenAI の存在があります。OpenAI も 2026年後半の上場を目指しているとされ、その企業価値は 1 兆ドル (約 157 兆円) に達する可能性も指摘されています。投資家の一部は、Anthropic が先に上場することで市場の主導権を握ることを期待しているようです。両社のIPOは、現在の「AIバブル」とも言われる市場環境の中で、赤字を抱える AI スタートアップに対する投資家の真価を問う試金石となるでしょう。
Anthropic の IPO 準備は、AI業界の競争が新たなステージに入ったことを示しています。強固な資金基盤と急成長を背景に、史上最大規模のテック IPO となる可能性を秘めていますが、会社側が慎重な姿勢を保っている点も考慮すべきでしょう。この IPO の行方は、今後の AI スタートアップの評価基準や、資本市場の AI 分野への関心度を測るうえで重要な指標となりそうです。
