Anthropic が AI アシスタント Claude の能力を強化する新たな「 Think 」ツールの導入を発表しました。このツールは、複雑な問題解決や多段階の意思決定において Claude が構造化された推論を行えるようにするもので、特に外部ツールを使用するタスクで大きな効果を発揮します。
Think ツールの特徴は、Claude が問題解決の途中で「一時停止して考える」ための専用スペースを提供する点です。Anthropic によると、これは実際には「何もしない(no-op)」ツールとして設計されており、Claude が適切なタイミングで思考を整理する「スクラッチパッド」のような役割を果たします。これにより、複数のステップやツールの出力を分析しながら論理的に思考を進めることが可能になります。
実験結果は良好で、航空会社の顧客サービスシナリオでは、Tau Bench フレームワークを使用したテストにおいて Claude のパフォーマンスがベースライン比で 54% 向上し、初回成功率が 0.332 から 0.584 に改善しました。リテールドメインでも成功率が 0.783 から 0.812 に向上しています。また、ソフトウェアエンジニアリングタスクでは SWE Bench で平均 1.6% のパフォーマンス向上を記録しました。
Think ツールの主な用途としては、適用されるルールのリストアップ、必要な情報がすべて揃っているかの確認、計画した行動がポリシーに準拠しているかの検証などがあります。例えば、フライトのキャンセル手続きを進める前に、ユーザー ID やキャンセルルールを確認するといった具体的なプロセスが強化されます。
実装面では、Claude の既存のツール呼び出しメカニズムに簡単に統合でき、開発者は JSON コマンドを使用してこの機能を活用できます。また、Think ツールは Claude 3.7 Sonnet で導入された「拡張思考(Extended Thinking)」モードとは独立して動作します。拡張思考が競合他社と同様、回答生成「前」に前処理として長時間の推論を行ってから回答し始めるのに対し、Think ツールは回答プロセス中にリアルタイムで思考を整理する点で異なります。
Anthropic は、この技術が AI エージェントの信頼性向上に大きく寄与すると期待しており、特に指示への厳密な準拠やマルチステップタスクでの一貫性といった現在の AI が抱える課題の解決策になると見込んでいます。この革新的なアプローチは、AI が「考える」プロセスを可視化し強化する重要な一歩と言えるでしょう。
筆者の視点:Anthropic が昨年末に発表した MCP(Model Context Protocol)は、従来の API に代わる新たなプロトコルとして注目を集めています。MCP を活用することで、AI チャットが外部ツールとより簡単に連携できるようになり、外部ツールを提供する各社も次々と自社対応の MCP サーバーを立ち上げています。
そうした流れの中、発表されたのが今回の「Think」と呼ばれる新ツールです。「Think」は従来の「事前に考えてから回答する」型のモデルとは異なり、回答の途中で、例えば外部ツールから得られる情報がユーザーの期待に応えるものであるかどうかをリアルタイムで「考える」ことが可能になります。
Anthropic はしばしば地味ながらも優れたツールをひっそりと公開することで知られており、今回の「Think」も業界外からの注目はまだ限られているものの、今後の AI エージェント開発において重要な役割を果たすものとして期待されています。