Anthropic は 2025 年 12 月、世界中の Claude.ai ユーザーを対象に、大規模な調査を実施しました。159 カ国・ 70 言語から 80,508 名が参加し、結果は 2026 年 3 月に公開されています。同社はこの調査を「史上最大規模の多言語質的調査」と位置づけており、Anthropic 社長のダニエラ・アモデイ氏も LinkedIn で取り上げています。
今回の調査で特に注目されるのは、AI 自身がインタビュアーを務めた手法です。「Anthropic Interviewer」と名付けられた専用の Claude が 80,000 人超の参加者それぞれと自動で個別対話を行い、「もし制約がなければ AI に何をしてほしいか?」といった自由な発想を引き出す問いを投げかけました。人間のインタビュアーを大量に用意することなく、多言語かつ大規模な質的調査を一度に実施できたという事実は、社会調査や市場調査のあり方を根本から変える可能性を示しています。参加者からは、人間が相手では話しづらいような身近な悩みや経済的な不安、人間関係のつまずきまで率直に語られており、回答の深さという点でも従来手法を上回る結果が得られたといいます。
調査から見えてきたのは、ユーザーが AI に期待することの本質です。表向きは「業務の効率化」を挙げる声が多いものの、話を深めると「家族と過ごす時間を増やしたい」「もっと自分らしい仕事に集中したい」という願いが浮かび上がりました。期待の内訳では「仕事でより高いレベルを目指したい( 18.8% )」が最多で、「自分自身を変えたい( 13.7% )」「日々の生活を楽にしたい( 13.5% )」と続きます。
実際に効果を感じているユーザーも多く、回答者の 81% が「目標に向けて前進できている」と答えています。具体的には生産性の向上( 32% )や時間の節約( 50% )が代表的な効果として挙げられており、「考えを整理する壁打ち相手になってくれる」という声も 17% を占めました。
一方で不安も共存しています。最も多い懸念は、誤った情報を自信満々に答えるいわゆる「ハルシネーション」など AI の信頼性の問題( 26.7% )で、雇用や経済への悪影響( 22.3% )、自分で考える力が衰えるのではという不安( 21.9% )が続きます。Anthropic はこうした期待と懸念の共存を「光と影」と表現し、ユーザーは AI 賛成・反対に二分されるのではなく、同じ人物の中に両方の感情が入り混じっていると分析しています。
地域による温度差も顕著です。南米・アフリカ・東南アジアでは AI を格差是正のチャンスと捉える前向きな見方が強い一方、欧米では懸念の声が相対的に大きくなっています。世界全体では 67% がポジティブな見方をしており、Anthropic はこの結果を今後の Claude の開発方針に活かすとしています。ユーザーが求めているのは、単に賢い AI ではなく、透明性があり信頼して使い続けられるパートナーだというメッセージが、今回の調査からはっきりと伝わってきます。
