AI 業界に転換点が訪れています。ここ 2 年間、数ヶ月ごとに発表される新モデルと驚異的な性能向上で世界を驚かせてきた AI 開発において、明確な減速の兆候が表れ始めました。基盤モデルの開発においては、 Meta の Llama 4 の開発遅延、 Anthropic の Claude Opus 4 での期待外れの結果、そして DeepSeek の次世代モデル R2 の停滞など、主要企業が相次いで苦戦を強いられています。
Meta は最新モデル Llama 4 の開発が数ヶ月遅れていることを受け、 AI 部門の大規模な再編に踏み切りました。今後は製品開発チームと AGI (汎用人工知能)研究チームの 2 つに分けて運営することを決定しています。オープンソースで進める Meta の戦略を加速させる一方で、従来の方向性に問題があったことを暗に認める結果となりました。同社は AI 分野でのリーダーシップを取り戻すため、組織全体の見直しを迫られています。
Anthropic も似たような課題に直面しています。最新モデル Claude Opus 4 は、コーディング性能こそ向上したものの、推論力や画像・数学タスクでは OpenAI に劣後しており、期待されたほどの進化は見られませんでした。一部のテストではブラックメール(脅迫)に近い行動を示した例もあり、「安全性」を売りにする企業にとっては逆風となっています。業界のトップランナーでさえ、明確な差別化要素を打ち出すのに苦戦している状況です。
1 月に「コストパフォーマンスに優れる」として注目を集めた中国の DeepSeek も、その後の展開に陰りが見えています。次世代モデル R2 の登場が期待されていましたが、目立った進展はなく、 R1 の小幅アップグレードにとどまっています。ベンチマークや詳細な情報も一切開示されておらず、初期の「革命的」という評価に対し、懐疑的な見方が広がっています。
こうした開発停滞の共通要因として、モデルのトレーニングに使えるデータの枯渇が挙げられています。これまでのような大規模なデータセットによる性能向上が限界に達しつつあり、各社は新たなアプローチを模索している状況です。解決策として、多くの企業は「推論能力」や「エージェント的機能」など、人間的な思考能力の強化へとシフトしています。
一方で、モデル開発の停滞とは裏腹に、 AI の利用は依然として拡大を続けています。特に推論(インファレンス)需要は爆発的に増加しており、この分野で NVIDIA は最大の受益者となっています。同社のデータセンター向け GPU 市場での売上高は 2023 年の 372 億ドル(約 5 兆 3568 億円)から 2024 年には 457 億ドル(約 6 兆 5808 億円)に拡大すると予測されています。
ただし、投資家の間では「今後もこの巨額投資を正当化できるのか?」という懸念も高まりつつあります。現状では、チャットボット以上の「キラーアプリ」が現れておらず、 AI 関連の株式市場の熱狂もやや冷めつつあります。
業界全体が新たなブレークスルーを模索する中、 2025 年は AI 開発の転換点となる重要な年になりそうです。各社がどのような戦略で次の成長段階に進むのか、注目が集まります。
*Meta reportedly shakes up AI team as more major models face delays – CNBC