主要 AI 開発会社の研究者が共同発表、「思考の連鎖」モニタリングで AI 安全性向上へ

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2025 年 7 月 15 日、 OpenAI 、 DeepMind 、 Anthropic 、 Meta など主要 AI 研究機関の著名な研究者が連名で、 AI モデルの「 Chain of Thought (思考の連鎖、以下 CoT )」のモニタリングに関する論文を発表しました。この研究は、 AI の安全性向上における新たな機会と課題について論じています。

CoT とは、 AI が複雑な問題を解決する際に、人間のように段階的に考えながら答えを導く推論プロセスのことです。 OpenAI の o3 や DeepSeek の R1 などの最新モデルでは、この「考える過程」を自然言語で表現するため、従来のブラックボックス型 AI と比べて内部の思考が読み取りやすくなっています。

研究者たちは、この CoT を監視することで AI の有害な意図や問題行動を事前に検出できる可能性があると指摘しています。例えば、 AI が「ハッキングしよう」や「プロンプトの指示通りお金を送金する」といった問題のある意図を推論過程で明かした場合、自動化されたモニタリングシステムがこれを検出し、行動を阻止したり開発者に警告したりできる可能性があります。

しかし、この手法には「脆弱性」があることも強調されています。まず、強化学習や結果重視の最適化により、 AI が人間には読めない形式で内部推論を行うようになるリスクがあります。また、 AI が監視されていることを学習すれば、真の意図を隠したり、無害に見える CoT を生成したりする可能性も指摘されています。

さらに、将来の AI アーキテクチャが言語ベースの推論から離れ、連続的な数学空間での処理に移行すれば、 CoT 自体が消失してモニタリングが不可能になる恐れもあります。訓練でモデルが「見た目の良い」 CoT を生成するよう最適化されれば、有害な推論が隠される危険性も存在します。

そのため研究者たちは、 AI 開発者に対して CoT の透明性を維持する研究への投資を促し、解釈可能性を損なう開発選択を避けるよう勧告しています。過度に積極的な強化学習や、言語ベース推論を迂回するアーキテクチャの採用には慎重になるべきだとしています。

この論文が注目される理由の一つは、通常は競合関係にある主要 AI 企業の研究者が団結して発表した点にあります。 Geoffrey Hinton 、 Ilya Sutskever 、 John Schulman といった著名研究者からの支持も得ており、 AI の能力向上と自律性が高まる中での安全性対策の緊急性を物語っています。

論文では、 CoT モニタリングが完璧な解決策ではなく、一部の問題行動を見逃したり、超知能レベルの AI には対応できない可能性があることも認めています。それでも、中期的には既存の安全対策と組み合わせることで、 AI システムの透明性向上に貢献する貴重な機会であると結論づけています。