Andreessen Horowitz(a16z)は 2025 年 10 月 2 日、「The AI Application Spending Report」をリリースしました。このレポートは、フィンテック企業 Mercury の 20 万人以上の顧客の取引データを基に、スタートアップ企業が実際にどの AI 企業に資金を投入しているかを分析したものです。ウェブトラフィックや話題性ではなく、実際の支出データを用いることで、 AI が実際にどのような業務にどのくらい適用されているかのリアルな実態を明らかにしています。
レポートでは、 AI アプリケーション層の 50 社を特定し、これらを「横断的(Horizontal)」型と「垂直特化(Vertical)」型に分類しています。横断的型は会社全体の生産性向上を目指すもので、 OpenAI(1 位)、 Anthropic(2 位)、 Perplexity(12 位)などの大規模言語モデルアシスタントや、 Notion や Manus のような文書連携ワークスペースが含まれます。全体の 60 %が横断的型、 40 %が垂直特化型でした。
注目すべき分野として、クリエイティブツールと「vibe coding」(エンジニアでなくても利用可能な AI アプリ開発ツール)が挙げられます。 クリエイティブツールでは、Freepik(4 位)、 ElevenLabs(5 位)、 Canva 、 Midjourney などがランクインしています。また vibe coding 分野では Replit(3 位)が企業向け機能を強化し、Cursor など他社と比較して著しい収益差を示しています。
垂直特化型カテゴリでは、主に人間の業務を増強するツールが大多数を占めました。垂直型 17 社のうち 12 社が AI と人間が協働する「コパイロット」型で、カスタマーサービス分野では Lorikeet(8 位)や Customer.io(14 位)、営業分野では Instantly(13 位)や Clay(25 位)、採用分野では Micro1(9 位)などがランクインしています。一方、 5 社は業務を完全に完結させる「 AI 社員」型を目指しており、法務契約レビューを行う Crosby Legal(27 位)、 AI エンジニアの Cognition(34 位)、営業業務を自動化する 11x(37 位)などが含まれます。現時点では「人間+ AI 」のハイブリッド活用(コパイロット型)が主流ですが、技術の向上に伴い、完全なエージェント型へのシフトが予想されています。また、多くの製品は個人向け(BtoC)から始まり、企業機能(BtoB)を備えるように進化しているのも大きなトレンドです。
このレポートは、話題性ではなく実際の支出データに基づいているため、 AI ネイティブ企業の実態を把握する上で非常に有用です。どの AI サービスが本当にビジネスとして成立しているのかを知りたい投資家や起業家にとって、価値の高い分析と言えます。