ニューヨークを拠点とするスタートアップ「Hume AI」は、人の感情を理解し、それに共感を示すことができるAIアシスタントを開発している会社です。このたび同社は、シリーズBラウンドで5000万ドル(約75億円)の資金調達(※)を完了し、「Empathic Voice Interface (EVI)」のベータ版をリリースしましたので、早速試してみました。
実際に試してみた感想は、驚きの連続でした。以前から顔の表情や音声から人の感情を認識する研究はありましたが、それをAIアシスタントと組み合わせることで、AIとのより自然なコミュニケーションが可能になることを実感しました。
また、EVIのチャットボットには、ユーザーの発話を引き出すための工夫が随所に施されていることがわかります。同社が「empathic LLM(共感型LLM)」と呼ぶ大規模言語モデル(LLM)を採用することで、話の文脈と検出されたユーザーの感情に基づいて、AIが発する会話の言葉選びやトーンが適切に調整されています。また、AIが話す音声や内容も非常に自然で、少し話をしていると、まるで本物の人間と話しているかのような錯覚を覚えます。
Hume AIの創業者Alan Cowenは、UC Berkeleyを卒業したGoogle AIの元研究者で、もともとセマンティック空間理論を用いて感情表現を理解する研究を行っていました。今回のEVIの開発においては、数百万もの人間の会話データを用いてモデルのトレーニングを行い、自然な会話の流れを実現しています。
筆者の独断の評価は星5つ。Hume AIは来月、開発者がEVIを自社のアプリケーションに組み込むためのAPI(ベータ版)を公開予定です。ユースケースとして、例えば医療現場での利用や、メンタルセラピー、外国語教育、最近注目のロボティクスなどでの活用をすぐに思いつきますが、それ以外でも、AIとのインタラクションが発生する場面で同社の技術は幅広く活用可能と思われます。今後の更なる発展に期待したいと思います。
*EQT Venturesがリードを取り、Union Square Ventures、Nat Friedman & Daniel Gross、Metaplanet、Northwell Holdings、Comcast Ventures、LG Technology Venturesなどが参加。