2025年 12 月、AI 音声合成技術のリーディングカンパニーである ElevenLabs は、ソーシャルメディア大手 Meta との戦略的提携を発表しました。このパートナーシップは、ElevenLabs の高度なオーディオおよび音声技術を Instagram やメタバースプラットフォームの Meta Horizon といった Meta の主要プラットフォームに統合するもので、コンテンツ制作とユーザー体験に大きな変化をもたらすとみられています。
今回の提携の核となるのは、ElevenLabs が持つ 70 以上の言語に対応したテキスト読み上げ(TTS)などを Meta のエコシステムに導入することです。これにより、Meta はクリエイターとユーザーに対し、より豊かで没入感のあるオーディオ体験の提供を目指します。この動きは、マーク・ザッカーバーグ CEO が推進する大規模な AI 戦略において、これまで手薄だったオーディオ分野を強化するものです。
Instagram においては、特にショート動画プラットフォーム「リール」での自動多言語吹き替え機能が便利になる予定です。クリエイターは、自身の声質や表現を保ったまま、作成した動画を瞬時に各国の言語に吹き替えることが可能になります。これにより言語の壁が取り払われ、例えば日本のクリエイターが投稿したコンテンツが、世界中の視聴者に届けられるようになります。
一方、VR/MR プラットフォームである Horizon では、没入感を高める音声体験が進化します。クリエイターは、キャラクターボイスの生成、動的なサウンドスケープの作成、インタラクティブなオーディオ要素の設計がより容易になり、仮想世界をよりリアルで魅力的なものにできます。これにより、メタバース内での創造的可能性が大きく広がります。
AI 音声技術の普及には、ディープフェイク(偽音声)といった倫理的な課題も伴います。この懸念に対し、両社は生成された合成音声に特殊な透かし(ウォーターマーク)を導入し、AI が生成したことを明示する仕組みを計画しており、責任ある AI 利用への姿勢を示しています。
