NVIDIA、自動運転向けオープンAIモデル「Alpamayo-R1」を発表

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NVIDIAは、サンディエゴで開催された「NeurIPS 2025」会議において、自動運転技術の研究を加速させるオープンAIモデル「Alpamayo-R1」を発表しました。このモデルは、自動運転システムが単なる「知覚」から、「意味の理解と推論」へと進化する新たな段階を示すものです。

Alpamayo-R1は、視覚情報、言語理解、論理的推論を統合した「ビジョン言語アクション(VLA)」モデルで、特に歩行者が多い交差点といった複雑な状況で真価を発揮します。このモデルは、2025年1月に発表されたNVIDIA独自の「Cosmos 推論」モデルを基盤としており、「Chain-of-Thought(思考の連鎖)」と呼ばれるメカニズムを導入しています。これにより、運転タスクを解釈可能な複数の推論ステップに分解し、車両が「なぜその行動を選択するのか」を理解できるようになります。

従来のルールベースのシステムでは対応が困難だった工事現場の迂回や歩行者の手信号の解釈といった「特殊なケース」に対し、Alpamayo-R1 は段階的な推論で対応します。例えば、交差点では、歩行者や自転車を識別し、その意図を推測、交通ルールと合わせて将来の状態を予測し、最も安全な行動を選択するというプロセスを実行します。これにより、人間が持つような「常識」に近い判断を自律走行車にもたらすことを目指しています。

NVIDIA がこのモデルを GitHub と Hugging Face でオープンソースとして公開した点は注目に値します。これまでクローズドな開発が主流だった自動運転業界において、このオープンなアプローチは研究開発の障壁を下げ、技術革新を促進する可能性があります。NVIDIA は、このモデルを通じて、限定条件下での完全自律走行を意味するレベル 4 自動運転の実現を加速させることを目標に掲げています。

また、NVIDIA はモデル本体だけでなく、トレーニング用のツールセット「 Cosmos Cookbook 」やシミュレーション環境「 AlpaSim 」、大規模な運転映像データセットも提供しており、開発エコシステムの構築にも力を入れています。Alpamayo-R1 のリリースは、同社が推進する「物理 AI 」戦略の重要な一環であり、自動運転技術が新たなフェーズに入ったことを示唆しています。

テスラや Google の Waymo が実社会での走行実績で先行している中、このモデルを活用して他の競合他社企業が追いつくことができるのか、注目したいところです。