AWSは、年次イベント「 re:Invent 2025 」において、AI分野における一連の画期的な発表を行いました。これは、AIインフラから基盤モデル、エージェント、開発体験に至るまで、同社のAI 関連製品の全レイヤーを網羅する大規模なアップデートです。
発表の中核をなすのが、新しい基盤モデル「Amazon Nova」ファミリーです。特に「Nova 2」は、GPT-5.1などの主要モデルに匹敵する性能を発揮し、テキスト、画像、音声、動画を扱うフルマルチモーダル能力を持つ「Nova 2 Omni」も登場しました。これらのモデルは Amazon Bedrock を通じて提供され、Bedrock 自体も Mistral AI や OpenAI など他社製モデルの追加や、平均 66% の精度向上を実現する「Reinforcement Fine Tuning (RFT)」機能により、その柔軟性と性能を向上させています。
モデル開発の基盤も強化されました。「Amazon SageMaker AI」は、データ統合からモデル開発、デプロイまでを単一プラットフォームに統合。特に大規模モデルのトレーニング時間を最大 40% 短縮する「HyperPod」などが注目されます。ハードウェア面では、次世代AIチップ「Trainium 3」が発表され、前世代比で最大 4.4 倍のパフォーマンス向上を実現しました。さらに、企業が占有のAIインフラをAWS内やオンプレミスに構築できる「AWS AI Factories」も発表され、セキュリティやデータ主権の要件にも対応します。
また、AWSはAIの未来を「エージェント」と位置づけ、自律型ソフトウェア開発エージェント「Kiro」の進化に加え、「AWS Security Agent」と「AWS DevOps Agent」という特化型エージェントを新たに導入しました。これらは、Amazon Bedrock AgentCore プラットフォーム上で構築・運用が可能になります。
Amazon は常に AI 分野での出遅れを指摘されてきましたが、今回の発表は、AWSがインフラ、モデル、ツール、エージェントというAIの各レイヤーを垂直統合し、企業がビジネス価値を創出するための包括的なソリューションを提供しようとする明確な戦略を示しています。
