Anthropicの研究ーAIが米国の労働生産性成長率を倍増させる可能性を示唆

投稿者:

AI 研究企業の Anthropic は、同社の AI モデル「Claude」との 10 万件に及ぶ実際の会話を分析した新しい研究結果を公表しました。2025年11月25日から26日にかけて発表されたこの研究は、AI の広範な導入が米国の年間労働生産性成長率を 1.8% 押し上げ、現在の成長率をほぼ倍増させる可能性があると推定しており、AI の経済的インパクトに関する具体的な洞察を提供しています。

これまでも McKinsey や Goldman Sachs などの機関が AI の経済効果を試算してきましたが、今回の Anthropic の研究は、実際の AI 利用データに基づいてマクロ経済への影響を推定する初期の試みとして注目されます。この研究は、同社が AI の経済的影響を継続的に分析する「Economic Index」という取り組みの一環です。

研究の主要な発見として、Claude の支援によってタスクの完了時間が平均で約 80% 短縮されることが示されました。この時間短縮効果を経済全体に適用すると、米国の年間労働生産性成長率が 1.8% 増加するという試算になります。これは 2019年以降の平均成長率(約 1%)を大きく上回る水準です。また、この効果は経済全体の効率性を示す全要素生産性(TFP)を年間 1.1% 押し上げることに相当するとも見込まれています。特に生産性向上が期待されるのは、ソフトウェア開発、マネジメント、マーケティングといった専門スキルを要する分野です。

分析手法として、Anthropic は独自ツール「Clio」でプライバシーを保護しつつ会話データを分析しました。その上で、AI 自身に「AI なしでタスクを完了した場合の時間」を推定させ、その差分を生産性向上として定量化するというユニークなアプローチを採用。このデータに米国労働省の O*NET データベースや米国労働統計局(BLS)の雇用データを組み合わせ、経済全体への影響を導き出しています。

もちろん、この分析には限界もあります。Anthropic 自身も、AI で節約された時間がすべて生産的な活動に再配分されるとは限らない点や、人間が AI の生成物を検証・修正する時間を考慮していない点を指摘しています。また、この推定は現在の AI モデルの能力に基づくものであり、将来の技術進化や実際の普及ペースといった不確実性は含まれていません。

本研究は雇用の変化には直接言及していませんが、生産性向上と労働市場への影響は表裏一体の課題です。AI がもたらす潜在的な経済的利益を実現するためには、節約された時間をいかに有効活用するか、そして雇用の変化に社会としてどう対応していくか、といった課題に取り組む必要があります。