Google、新AIチップ「Ironwood」を発表 ーNVIDIAへの対抗軸となるか

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Googleが、AI処理能力を大幅に向上させた第7世代 Tensor Processing Unit (TPU)「Ironwood」の一般提供を間もなく開始すると発表しました。AIモデルの大規模化が進む中、この新しいチップは、NVIDIAが優位に立つAI半導体市場において、Googleの競争力を大きく引き上げる可能性があります。

Ironwoodは、Googleが「推論の時代 (age of inference)」と位置づける、生成AIなどのモデルの「実行」に特化して設計されています。性能面では、前世代の Trillium (TPU v6e) と比較してチップあたり 4 倍以上の向上を実現しており、第5世代の TPU v5p と比較すると最大で 10 倍のピーク性能に達するとされています。各チップは 192GB の HBM3E メモリを搭載し、メモリ帯域幅も Trillium の 4.5 倍に向上。これにより、大規模モデルを扱う際のデータ転送のボトルネックを解消します。

この新しいチップのポテンシャルを象徴するのが、AIスタートアップ Anthropic社の動きです。同社は、自社の Claude モデル群のトレーニングと実行のため、最大 100 万個の Ironwood TPU を使用する計画を表明しました。この提携は数十億ドル (数千億円以上) の価値を持つ可能性が指摘されており、Ironwoodが実用的なワークロードで高いコストパフォーマンスを発揮することへの期待を示しています。

Ironwoodの導入は、GoogleのAI戦略における重要な一手です。同社は、コンピューティング、ストレージ、ネットワークを統合した「AI Hypercomputer」アーキテクチャを推進しており、Ironwoodはその中核を担います。これは、単に高性能なチップを提供するだけでなく、システム全体でパフォーマンスを最適化し、NVIDIAの CUDA プラットフォームが持つソフトウェアの強みに対抗しようとする狙いがうかがえます。同時に発表された Arm ベースのCPU「Axion」と組み合わせることで、AIから汎用ワークロードまで、クラウドインフラ全体の強化を図っています。

Googleの Ironwood TPUは、その処理能力、スケーラビリティ、そして電力効率によって、AI開発の新たな選択肢となるでしょう。NVIDIAが圧倒的なシェアを握る市場に、Googleが独自シリコンで挑む構図がより鮮明になっています。