Google が宇宙データセンター構想「Project Suncatcher」を発表

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Google は 11月4日、太陽光発電衛星を活用した宇宙データセンター構想「Project Suncatcher」を正式発表しました。同プロジェクトでは、AI 処理チップの TPU を搭載した衛星群を地球上空約 640km の軌道に展開し、光通信で相互接続する計画となっています。

まず Planet Labs と提携し、2027年初頭に TPU を 4つずつ搭載した 2基のテスト衛星を打ち上げます。将来的には約 80基の衛星で半径 1km のクラスター構成とし、衛星同士を数百メートル間隔で配置。光学通信により 1.6テラビット毎秒の高速データ通信を実現します。

注目すべきは軌道設計です。「dawn-dusk sun-synchronous low earth orbit」という特殊な軌道により、衛星はほぼ常時太陽光を受けられます。その結果、地上設置の太陽光パネルと比べて 8倍の発電効率を実現し、重量のあるバッテリーを大量搭載する必要がありません。

宇宙放射線への耐性も検証済みです。次世代の Trillium v6e Cloud TPU を用いた 67MeV 陽子線照射実験では良好な結果が得られ、カリフォルニア大学デイビス校での評価により 5-6年間の運用に対応できることが確認されています。

コスト面では、宇宙輸送費が低軌道 1kg あたり 200ドル(約 3万円)まで下がれば、2035年までに地上のデータセンターと同等のコストで運用できる見通しです。SpaceX の大型ロケット Starship が年間 180回の打上げを実現すれば、この価格帯は達成可能とされています。

Sundar Pichai CEO は「他のムーンショット同様、数年のテストと技術的突破が必要になる」と述べ、Google が長年続けてきた挑戦的プロジェクトの新たな一歩と位置づけています。