視界にナビを投影、Amazonがスマートグラスを配送業務にテスト導入

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大手 EC サイトの Amazon が、配送業務の効率化と安全性の向上を目的として、AI を搭載したスマートグラスをドライバー向けにテスト導入していることが分かりました。この取り組みは、同社がサプライチェーン全体で推進する大規模な AI 戦略の一環です。

「Amelia(アメリア)」というコードネームで呼ばれるこのスマートグラスは、ドライバーの視界にナビゲーション、荷物情報、危険警告などをリアルタイムで表示します。コンピュータービジョンと AI センシング技術により、ドライバーはスマートフォンを使わずに、ハンズフリーで荷物のスキャンや配達証明写真の撮影ができます。特に、集合住宅内のような複雑な場所での配達作業をスムーズにすると期待されています。デザイン面では、数百人のドライバーからの意見を反映して改良が重ねられ、快適な装着感やディスプレイの見やすさが追求されています。

Amazon は、この技術がドライバーの注意散漫を防ぎ、周囲の状況に集中しやすくすることで安全性が向上すると説明しています。初期テストでは、参加したドライバーの身体的・精神的負担が 67% 減少し、1 つの配送ルートあたり 30 分以上の時間短縮が実現したという報告もあり、効率化への貢献も期待されています。

その一方で、この技術には懸念も寄せられています。AI とカメラによるセンシング機能が、停車時間や走行ルートを追跡する監視ツールとして使われるのではないかという指摘です。生産性の向上がドライバーへの過度なプレッシャーとなり、より厳しいノルマを課す口実になりかねないという批判もあります。Amazon は「グラスがドライバーの活動を記録することはない」と否定していますが、プライバシーや労働環境への影響を心配する声は依然として残っています。

このスマートグラスの開発は、Amazon が 2018 年に開始した配送サービスパートナー (DSP) プログラムへの総額 167 億ドル(約 2 兆 6052 億円)に上る投資の一環です。将来的には、配達ミスをリアルタイムで検知する機能や、庭にいるペットを認識して警告する機能の追加も計画されています。現在は北米でテスト運用が行われていますが、本格的な展開時期は未定です。