Google AI が癌免疫療法の新たな手法を発見

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Google DeepMind とイェール大学の研究チームが共同開発した AI モデル「 Cell2Sentence-Scale 27B 」(通称 C2S-Scale 27B )が、癌治療における新しいアプローチ方法を発見しました。この成果は 2025 年 10 月 15 日に発表され、 AI が生成した科学的仮説が実際の実験で検証された事例として注目を集めています。

C2S-Scale 27B は、 Google のオープンソース AI 「 Gemma 」を基盤とした 270 億パラメータ規模のモデルです。単一細胞の RNA シーケンシングデータを「細胞の文章」として解析することで、従来の手法では見逃されがちな生物学的パターンを抽出します。

AI が提案した仮説は、既存薬「 silmitasertib 」( CK2 阻害剤)と低用量インターフェロンの併用により、癌細胞の抗原提示能を 50 %向上させるというものです。抗原提示とは免疫系が腫瘍を認識する仕組みで、イェール大学での生細胞実験により、この併用療法の有効性が実証されました。特に、免疫系にほとんど認識されない「冷たい腫瘍」を、免疫攻撃を受けやすい「熱い腫瘍」に変えられる可能性が示されました。

この発見は、 AI が単なるデータ分析ツールを超えて、科学的発見を直接推進できることを示しています。モデルはオープンソースとして公開されており、研究者が自由に利用・改良できます。 Google CEO のサンダー・ピチャイ氏も「 AI が科学の進歩を加速させる」とコメントしています。

今後は動物実験や、ヒトを対象とした臨床試験での検証が進められる予定です。特に従来の免疫療法が効きにくかった肺癌や乳癌などの領域で新たな治療選択肢として期待されています。 AI 主導の仮説生成と検証というアプローチは創薬や免疫療法の開発を加速させる可能性があります。