中国は、米国による Nvidia 製 AI チップの輸出規制を受けて、今後 1 年以内に AI チップの生産を 3 倍に増やす計画を進めていると報じられています。これは、AI 技術における自主的な技術確立と、チップの国内調達率向上を目指す、政府主導の取り組みです。
規制の影響と中国の対応
米国の輸出制限により、中国は先進的な Nvidia チップ( H800 、 H20 など)の入手が困難になっています。 2025 年 4 月には、 Nvidia の H20 チップも輸出ライセンスが必要となり、規制が一層強化されました。これに対し、中国政府は補助金や政策優遇策を通じて半導体・ AI 産業への投資を加速しています。
半導体製造最大手の SMIC は、7nm チップの生産能力を来年倍増させる計画で、現在 Huawei が最大顧客となっています。また、 Huawei の AI チップ専用工場が 2025 年末までに稼働開始し、さらに 2 つの新工場が 2026 年に稼働予定です。これら新施設は、 SMIC の現有生産能力を上回る規模になる見込みです。
国産化への取り組み
大手 AI スタートアップ DeepSeek や Cambricon 、 MetaX 、 Biren なども、国内向け AI プロセッサの設計・製造拡大に参画しています。 Alibaba や Baidu も自社設計の AI チップ開発・検証を進めており、中国のデータセンターでは国産チップ採用が義務化されつつあります。
技術的には、最新の Nvidia 製品に比べ性能・効率面でまだ差がありますが、推論( inference )領域では国内製品の伸長が顕著です。 Huawei の Ascend 910C などの AI チップは、 生産能力やソフトウェアの最適化において課題が残っているものの、Nvidia の H100 に比べ約 60% の性能を持つとされています。
長期的な戦略の意味
この動きは、グローバル半導体産業における中国のプレゼンス強化と、技術主権( AI sovereignty )の獲得を目指す長期戦略の一環といえます。アナリストらは、中国が AI チップの生産を大幅拡大し、 Nvidia など米国メーカーへの依存度を減らす流れはほぼ既定路線だと予測しています。
しかし、完全な自給自足には数年を要し、高帯域幅メモリ( HBM )のような重要な周辺コンポーネントは韓国や米国に依存しているという課題も残ります。また、 Nvidia の強みであるソフトウェアエコシステムとの差を埋めるには時間がかかるものと思われます。