2025 年 7 月に発表された tryShortcut.ai の Excel エージェントは、自然言語での指示だけで複雑な Excel 操作を自動化する AI ツールとして注目を集めています。「売上合計を計算して」「月ごとの売上推移グラフを作成して」といった日本語指示だけで、数式や VBA の知識なしに業務を完了させることができます。
このエージェントの最も特筆すべき点は、Excel 世界選手権レベルのタスクを人間の 10 倍速で処理する能力です。例えば、「 Google の公開されてる決算資料からデータを取得して DCF (割引キャッシュフロー)分析を作成して」といった複雑な財務分析も、従来人間であれば 4 時間かかる作業を 20 分で完了させることができます。実際のベンチマークでは、McKinsey や Goldman Sachs の新卒アナリストを 89.1% の勝率で上回るパフォーマンスを示したとされています。
技術的には、ピボットテーブル、グラフ作成、データ自動計算、書式設定などの主要操作を全自動で実行し、既存の Excel ファイルの直接編集・インポート・エクスポートにも対応しています。インターフェースは空の Excel シートに似ており、サイドバーのチャット機能で指示を入力する直感的な設計となっています。日本語・英語・中国語などの多言語に対応し、作業途中で指示内容を変更した場合にも柔軟に対応できる適応力を持っています。
開発元は MIT 発のスタートアップ Fundamental Research Labs で、CEO の Nico Christie 氏らが中心となって開発しました。同社は 2025 年 8 月 1 日に Prosus 主導のシリーズ A で 3300 万ドル(約 49 億円)を調達し、Stripe の Patrick Collison 氏も投資に参加しています。シードラウンドの 900 万ドル(約 13 億円)と合わせて総額 4000 万ドル(約 59 億円)超の資金調達を完了しました。
料金体系は、月額 40 ドル(約 5900 円)の「 Shortcut Pro 」と月額 200 ドル(約 2 万 9500 円)の「 Shortcut Max 」の 2 プランで、両プランとも 7 日間の無料トライアルが用意されています。Max プランについては、ユーザーから「個人アナリストを雇用するようなもの」との評価を受けており、ROI (投資対効果)の高さから企業での導入が進んでいます。
このツールは、従来の Microsoft Copilot や Google Gemini のような補助ツールとは異なり、「個人アナリスト」のように独立して全自動で作業を進める点が特徴です。既に数千の企業で個人レベルの社員に利用されており、従来のプログラミング知識やマクロの専門知識が不要な点が高く評価されています。